『30S』真田佑馬インタビュー

一からの映画作りに挑戦して見えてきたこと、これからのことを熱く語る!

#30S#7ORDER#真田佑馬

7ORDER 真田佑馬

映画のもととなったのは、20代前半に書いた“やりたいことリスト”

アーティストグループ「7ORDER」の真田佑馬が原案・プロデューサーを務める映画『30S(サーティーズ)』は、30歳の誕生日を迎える男女を中心に人生の現実や悩みなどさまざまな側面を描いた群像劇だ。真田は俳優として出演もしており、登場人物の一人である御手洗甲を演じている。

7ORDER 真田佑馬

『30S』2023年8月11日より全国公開
(C)「30S」製作委員会

真田自身も現在、30歳。アイドルを経て、俳優、作詞家、作曲家など幅広く活動する彼が、30歳の節目に挑んだ映画づくりという冒険。そこで見えてきたものは? 20代から30代を駆け抜けた感想は? 1時間弱のインタビューで、今の思いを率直に語ってくれた。

日本のボーイズグループ“7ORDER”がファンの応援に笑顔で感謝

──30歳になると、10代、20代で決意したことが叶ったのかどうかと考えたりしますが、『30S』はそういった多くの人に共通するテーマがあり、また、真田さんがそれをご自身へ問いかけているようにも感じられました。

真田:この映画を作ったきっかけは、20代前半に書いたノートなんです。当時、やりたいことのリストを書くと叶うよ、というのが流行っていたから紙に書きだしていたんです。叶えられそうにないことや、叶えられそうなこと、例えば高級寿司を食べたいとか私利私欲が書いてあったのですが、その中の一つに映画を作りたい、というのがあったんです。それに、僕は芸歴が長いので、30歳になるときに何か一つ作品を残したいという思いもありました。その2つが重なって、仲間を集めて映画を作り始めました。

[動画]真田佑馬インタビュー/20代前半に書いた“やりたいことリスト”に映画があった

──今回、真田さんは原案・プロデュースを担当されていますが、ご自身で監督をしようとは思わなかったのですか?

真田:僕は大学で映像学科に通っていて、そのときお世話になった佐藤先生に監督をお願いしました。そして、他のスタッフも当時のゼミの仲間たちです。僕自身が学んでいたことは監督業に近いことなのですが、今回は、僕は発起人である、というところが大きいのと、先生から役者として出た方がいいんじゃないかというお話もあって、今、自分が監督をやってみるよりもそれをきちんとできる方にお願いしようと思って、佐藤先生に監督を依頼しました。

[動画]真田佑馬、学生時代の仲間を再び集めて夢を実現 8月4日/18時より掲載

──真田さんは主要人物の一人である御手洗甲を演じていますが、最初から自分が演じるならこの役、と決めていましたか?

真田:いや、全然。出過ぎは良くないかなと思っていて。でも監督に「待ってくださっている方もいるよ」と言われたので、決心しました。御手洗はストーリーテラー的な部分もありますが、そこまで多くは登場しないので。今回、僕は表にも出させてもらいながら裏もやってみてわかったのですが、映画制作はチームプレーで、誰一人欠けても絶対に作れないんですよ。もともと映画は好きでしたけれども、作ってみてより好きになりましたね。

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『30S』

──キャストのオーディションにも立ち会ったということですが、その立場になってみていかがでしたか?

真田:こちら側になったことは初めてだったので、これまで自分たちが受けたオーディションでやっていたことが選ぶ側にはこう見えていたんだな、というのがわかりました。30歳に近い年齢の方々に参加していただいたのですが、30歳はどういう年だと思うかをお聞きして脚本にも反映させていただいたので、僕らにとっても有意義な時間でした。

──今回、主人公のタケル役に小野匠さんを選んだ決め手は?

真田:小野君に関して僕が覚えているのは、絵を描いていらっしゃるというお話が印象的だったことと、お芝居がとてもナチュラルでいいな、ということです。僕に決める権利があっていいのかなと思うのですが、小野君で良かったと思いますし、出てくださったひとりひとりに感謝しています。

手探りの映画作り。僕自身も映画館に営業メールを送った

──今回、映画制作に一から携わってみて気付いたことや、大きな学びとなったことはどのようなことでしょうか。

真田:映画は一人では作れないということと、ロマンがある、ということですね。あとは、どのポジションにいても等しく大変だなと思いました。それぞれの人が、こういう風に撮りたいとかこういう風に演じたいとか意思を持って作っているから、つまりは掛け算なんですよね。プロデューサーとしてお金がかかることもわかりました。潤沢な人手や予算があるわけではなく、ひとりひとりが情熱でカバーリングして行くスタイルで進んでいきました。学生の時に出会った仲間と今度は仕事として集まって一緒に映画を作るという機会はそうないと思うので、本当に良かったと思います。

──学校の卒業制作の豪華版という感じなのでしょうか。昔からの仲間なら、皆さんが意見を出しやすい環境だったのですね。

真田:そうです。それぞれがプロになってリターンズ、みたいな感じです。みんなプロだけど部分的なプロというか、映画に関してはヒヨッコなのですべてがうまくいくわけではないのですが。僕自身も、映画館に営業のメールを送ったり、そういうことも初めてしたので、今はもう感謝が止まらない感じです。だから今回、ムビコレさんから取材の連絡をいただいたときに、めちゃくちゃ嬉しかったんですよ。もうぜひ受けましょうと。メディアの方々が来てくださること自体がありがたくて、今までもありがたかったのですが、それがより分かりました。

7ORDER 真田佑馬

──10代からお仕事されていて、グループでたくさんの活動をされていたので、取材の場もすでに用意されていたと思います。

真田:だから今回、「映画のホームページを作ったらインタビューに来てくれるんだ!」みたいな。一つ一つ手作りでやってみてわかったのは、人と人のご縁を大切にしたいということです。いろいろな縁を繋いでいけば、いつかみんながハッピーになれる作品が作れると思うんです。

──試写をご覧になって、自分が思っていた通りの作品でしたか?それとも、予想外の広がり方をしていましたか?

真田:一発目で見たのが粗編(※カットを粗くつないで編集したもの)で、音も整ってなかったものですから、「うわ、ひどいな」って。そこで、音をいろいろ調整していって、「映画ってこうやってできるんだ」と教科書的なことを思いましたね。フォーリー(※日常の動作音や効果音)ひとつでこうも違うんだなとか。音を撮るときはもっと静かにしようとか、もっとハキハキ喋ろうとか、自分が表側に戻ってきたときにここをこうしておけば裏方の人に迷惑がかからない、ということも分かってきました。成長しました。

7ORDER 真田佑馬

──それでこの取材が始まる前に、空調の音を気にしてくださったのですね(※インタビュー動画を撮影しているため)。ところで、撮影は去年の今頃(6月後半)でしたか?

真田:はい。6月だったので雨が降っちゃたりとか。天文台のシーンは1回のロケで終わるはずが、雨のために3回もやったんですよ。 でも、そのおかげで良いシーンも撮れましたし、天候以外は撮影も順調で、こんな幸せな現場はないよね、って監督とも話していたんです。

12歳で芸能界入り、応援してくださる人がいることが幸せ

──今、とても楽しい雰囲気でお話をしてくださっていますが、真田さんは現場でもムードメーカーなのでしょうか。

真田:どうでしょうかね。でも、どの現場でもこのスタンスですね。グループのときはみんながしゃべっているので僕は黙ってる時もありますけど。雰囲気は変わらないですよ。

──撮影してから1年経つと、作品の見え方も変わってくるかもしれませんが、いかがですか?

真田:構想から入れると約2年経っていますね。キャスト向けに試写会をやったときに、映画が終わってみんなが拍手してくれたのですが、「次、お客さんが入ったらやばいかも、耐えられるかな」って思いました。監督がニヤニヤしながらこっちを見て「来てるね」って。それはもう“来ます”よ、みんなのおかげで作ることができましたし。今回、僕は音楽を作ったり編集もして大変さがわかったので、一からやってきたものがみなさんのところに届くのがすごく嬉しいです。

──公開日が楽しみですね。この作品は「30歳」がひとつのテーマですが、これまでのご自身を振り返り、自分を褒めたいこと、逆にこうすればよかった、と思っていることはありますか?
7ORDER 真田佑馬

真田:僕は来年で芸歴20周年なんですよ。12歳でこの世界に入ってずっとやり続けてきて、ここまで応援してくださる人々がいることが幸せですよね。映画を作るきっかけをくださったのも、間違いなく応援してくださったファンの方々だと思います。生々しい話になりますが、ファンの方々が僕らのために使ってくれたお金が、直接ではないけれど、映画製作につながっているわけですし。だから、自分が30歳になった時に、何か形で返したいなと思っていて。僕はもともと曲を作ったりして作品で返すことが多かったから、映画を作るということにも辿りついたのですが、そういう意味でもこれまでの自分の選択がどれ一つでも欠けてはいけなかったんだと思います。間違った選択は多分してきてないし、しないだろうと思う。人を大切にして、繋げていって、より良いエンタメが生まれるのであれば、僕はそういう役回りをしていきたいなと思っています。

──12歳で芸能界入りしたということですが、エンタメの世界に興味を持ったきっかけはありましたか?

真田:最初は興味がなかったです、というか分からなかった、が正しいと思います。これ楽しそうと思ってやっていたら、今に至ったという。つらいときはめちゃくちゃありますが、20代後半になると責務というのが見えてくるというか。自分がやる活動によって誰かが笑顔になって誰かの心を救えているのであれば、それが一番合っている職業と言えるんじゃないかなと。だから自分のカテゴライズは何でもいいし、ポジションもそんなにこだわっていないです。

──真田さんは多才ですよね。いろいろなことが得意だと逆に一つを決めるのが難しいこともありますが、真田さんはひとつに決めずにマルチな活動を目指しているように見受けられます。
7ORDER 真田佑馬

真田:多分、自信がないんですよ。だからいろんなことに手をつけるし。また、マルチタレントといわれる方々を尊敬している部分もあります。

──尊敬されてる方や憧れている方はいらっしゃいますか?

真田:星野源さんとリリー・フランキーさんがすごく好きです。いろいろなことができるけれど、自分の表現の軸がある人に憧れます。そういう意味でも自分の作品を作ってみたいし、好き嫌いなく挑戦してみたいなと思います。

──先ほど、ご自身の選択に間違いはなかったとおっしゃっていましたが、人生の重要な場面で決断に迷われたとき、何を指針にしていましたか?

真田:ご縁を忘れないということと、愛情は見返りを求めてはいけないということですね。人は何かを返してくれると思うと期待してしまうから。でも愛情を注ぎ続ければいつか戻ってくるんですよ。自分にパワーがある限りはそのエネルギーを人に伝染させていけばいいかなと。マイナスなエネルギーですら愛しいなと思いますね。今、疲れてる、とかも言ってしまいますし。最近は、素直であることを心がけていますね。素直じゃないと人と疎遠になってしまうんですよ。

──素直でいるということは、今回の映画にも通じる部分がありますね。

真田:そうですね、素直でいることは大事ですね。特に年齢を重ねると、どんどん頑固じじいになるじゃないですか、特に僕みたいなタイプは。そうならないように、子どもの無邪気さは忘れないようにしたいですね。それに、「これは違うよね」とかはっきり言えるのはいつも素直でいるからですよね。自分の心が純粋で素直であれば、誰かがついてきてくれると思います。

[動画]真田佑馬、ガンコじじいにならない秘訣は“素直でいること” 8月4日/19時より掲載

悲しい思いも悔しい思いもしたけれど、すべてに感謝

──来年で芸歴20年と仰っていましたが、しがらみなどもある世界で、さまざまなことを考え、決断しながら進んでこられたのではないかと思います。

真田:言葉にするのは難しいのですが、偶然必然という言葉があるように、物事には自分では予測できない動きがありますよね。僕はそれを何度も体験してきて、悲しい思いをした瞬間も悔しい思いをした瞬間もありますが、それは仕方なかったよね、と理解できる瞬間もあるんです。それは一人じゃないからこそ起きる問題だし、人が増えれば増えるほど色々な問題が起きるので、誰が悪いとか俺は全然思ってないし、すべてに感謝しています。だから自分の人生を否定したくないから活動を続けているんだと思います。続けていればまたどこかで何かご縁があるだろうし、感謝を伝えられる日がくるかもしれないし、 自分を誇るためでもあるんです。

──自分を否定することはつらいですよね。お話を伺っていると、とても仲間を大事にされる方のように思いました。この短い時間だけで言うのもおこがましいですが。愛情があふれているというか、天使みたいな。

真田:いやいや、さっき見返りを求めないとか言いましたけれども、本当はすごい求めてますよ。お菓子とかちょうだいね、と思ってますけどね。まあそれぐらいユーモアあふれる人でいたいなと思っています。

──お菓子でいいんですか!?

真田:お菓子でいいですよ、お金をくれとは言わないので(笑)。差し入れとか嬉しいですし。

──こういったところもファンの方々に愛されているのでしょうね。
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真田:リアリストの一面もあるんですよ。だって今、正直このカメラの前でいい顔しようと思ってるし(笑)。でも純粋に、できる限り質問に答えたいけれど、これは答えたらあれかなと、いう冷静さと感情が等しく自分の中にあります。これも芸能活動を長く続けられている理由の一つかもしれないですね。

──人を大事にする思いが強いというのは昔からですか?

真田:そんなことないですよ、マジでそんなことはない。失ったから気づくことってあるじゃないですか。だから次は後悔しないようにしようと思ってやってきています。それが全部自分の経験値となっているから間違っていることをしてきたとも思わないし、人生はタイミングだよねって。全員が同じ考えになることはないけれど、一つの優しさと愛があれば会話はできるじゃないですか。それは捨てないようにしようとしています。

──現在30歳の真田さんですが、40歳に向けてやっていきたいことはありますか?

真田:やりたいことや目標はたくさんありますが、この年齢になると、それを叶えるために必要なこともなんとなくわかってくるじゃないですか。まずは健康を第一に。心も体も元気でやれるようにしたいです。また、今は“家”を大事にしたいです。映画のチームもひとつの家だし、プライベートの家もあり、他にも様々な“家”があるので、これらは守りたいです。家があれば、みんなが迷った時にも戻ってこれますから。最近は、あまりに高い目標を掲げて身を滅ぼすのも違うなってちょっと思っていて。まずは、目の前の人たちを笑わせることを膨らませていけばいいのかなって。新しく挑戦したいことは、今は秘密です。ちょっと最後にかっこつけちゃってますけど(笑)。

──時間もなくなってきましたが、最近、ハマっていることありますか?

真田:この間、佐藤監督と焚き火したのですが、火はいいですね。何もしゃべらず火がパチパチしているのを見ているだけで癒されますね。

──真田さん情報としては、可愛いものやお花が好き、というのもよく挙げられていますが。お花では何がお好きですか?

真田:花とか可愛い形のパンとか好きですよ。お花屋さんはよく行きますね。一輪買ってきて、花瓶に飾って、でも枯らしちゃうんですよね。好きな花はなんだろう。お手軽なところで言うと、ガーベラもいいですよね。

──お手軽じゃなくてもいいです、本当に好きなもので。

真田:いえ、お手軽でいいです(笑)。そうそう、今、青森ヒバの香りにはまってるんですよ、アロマオイルとか。花から逸脱しちゃいましたね、樹木ですね、これは(笑)。

──樹木ですね(笑)。最後になりますが、これからこの映画を見てくださる人々にメッセージをお願いします。

真田:この映画は何回か見ると答えが変わってくると思いますし、答えがないっていうのも答えになるのかなと思うので、ぜひ何回か足を運んでいただきたいです。あまり深いことを考えずに1回見ていただいて、心がぽかっとするのかどうかは人それぞれの価値観で違うと思いますが、きっと僕らが伝えたいことの一部が伝わるんじゃないかなと思います。また、登場人物の誰かの言葉が刺さるかもしれません。僕たちも楽しみなので、ぜひ感想を教えてください。

(text:中山恵子/photo:泉山美代子)

 

真田佑馬
真田佑馬
さなだ・ゆうま

1992年11月21日生まれ。東京都出身。俳優、作詞家、作曲家。2004年より芸能活動を開始し、多くのドラマやバラエティ、舞台で活躍する。19年に「7ORDER project」が始動。「7ORDER」のメンバーとしては、ギターを担当している。映画『30S』(23年)では原案・プロデューサーを務め、出演もしている。