1973年10月13日生まれ。神奈川県出身。96年に、NHK朝の連続テレビ小説「ひまわり」のヒロインに抜擢され、本格的に女優デビューする。Jホラーブームを牽引した作品のひとつ『リング』(98年)、また織田裕二と共演した『ホワイトアウト』(00年)で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞した。他、主な映画出演作に『リング2』(99年)、『犬神家の一族』(06年)、『眉山−びざん−』(07年)、『ゴースト もういちど抱きしめたい』(10年)など。テレビドラマでの活躍も目覚ましく「やまとなでしこ」(00年)、「救命病棟24時」シリーズ(99年〜09年)をはじめ、11年放送の主演作「家政婦のミタ」では最高視聴率40%を叩き出し、社会現象を巻き起こした。
2011年、ドラマ「家政婦のミタ」で高視聴率女優としての力を見せつけた、松嶋菜々子。『犬とあなたの物語 いぬのえいが』(10年)以来の映画出演となった最新作『藁の
楯 わらのたて』では、“ミタ”で周囲を驚かせた大イメチェンを、ふたたびやってのけている。今度は、女SPとしてプロに徹してみせたのだ。
そんな松嶋にインタビューを敢行。初めて組むことになった鬼才・三池崇史監督の現場や、役作りについてなどを、取材時には従来のイメージ通りの優しい笑顔を湛えながら話してくれた。
──犯人に10億円の懸賞金がかかり日本国中がざわめいたり、移送するその犯人が悪の象徴のような「クズ」だったりと、アクションのみならず、心理面も突いてくる衝撃的な作品でした。最初にプロットを聞かれたときはどのように感じましたか?
松嶋:10億円という額や、それを日本中に宣伝するという行為は現実離れしていますが、子を持つ親として、こうした行動に出たくなる気持ちは理解できるので、その部分はリアリティのある話だと感じました。
松嶋:三池監督がメガホンをとられるということ。私のなかでリアリティが持てる話だと感じたこと、そして、これまで経験したことのないSP役に挑戦してみたくて、ぜひやらせていただきたいと思いました。
松嶋:最初にいただいた台本では、私が演じた白岩に子どもはいませんでした。最終的に三池監督によって、シングルマザーの設定に変更されたのですが、自分が共感できる部分が増えたことで、白岩の役に深みを与えてくださったと思っています。
松嶋:SPとしてプロに徹しているという気持ちで役作りをしましたが、あえて何かを意識することはなかったです。白岩もプライベートと仕事をはっきりと分けている人ですが、でもそれは根底にあればいいものなので、ちょっとでも感じてもらえたらと思います。
松嶋:個人的に体力作りを兼ねてトレーニングしていた期間が約半年間。クランクインの2ヵ月前からはプロの方に拳銃の構え方や動きを教えていただきました。身体で覚えなければいけない部分が多かったので、時間をかけられてよかったです。アクションは身体のメンテナンスも必要ですし、本当に大変な撮影だと実感しました。私のアクションシーンは、三池監督によってシャープに撮影していただきました。
松嶋:名古屋で猛暑日を観測したときにも撮影をしていたのですが、夏バテをすることもなく、乗り越えることができました。現場では、1.5kgほどある重い拳銃を、撮影期間中毎日のように振り回していたので、上半身にもだいぶ筋肉がついたんです。一度、(測定器で)測定してみたら、「あなたは標準以上に筋肉があるマッチョな人間です」みたいな表示が出ました(笑)。みなさんも下半身はある程度、筋肉がついていると思いますが、なかなか上半身にはつかないですよね。器械にも誉められてよかったです(笑)。
松嶋:初めて監督とお会いしたとき、内容に関して2時間くらいかけてお話ししてくださったので、作品へのイメージがすごく広がって、自分のなかでの組み立てもできました。本当に少年のような雰囲気のある方で、笑顔とキラキラぱっちりとした眼力のある瞳でお話しされるのが印象的でした。現場では、衣装などでもベルトの位置や太さなど、細かいところにまでこだわりを持たれていて、全部に目が行き届いている方。撮影中は、スタッフもキャストも和気あいあいとしていて、いい緊張感といいリラックスで導いてくださる監督でした。
松嶋:役者同士がたくさんお話をしたから現場が緩んでしまうとか、そういうことは感じない大人の現場でしたね。三池組は、チームワークがすごくでき上がっていて安定していましたから、役者はそこに乗っていけばいい感じでした。
松嶋:これまでの共演は、何シーンかだけということも多かったので、長くご一緒させていただいたのは今回が初めてなんです。大沢さんとは、役に関しての話ではなく、世間話をかなりしていました(笑)。朝5時までの撮影でも、そこからの帰りのバスの車中、みんなは寝ているのにずっとふたりで話していたりとか(笑)。
松嶋:藤原さんとはお話しをする機会が少なかったのですが、画のイメージをご自分のなかで作っていたり、見えていたりする方なんだろうなと思いましたね。大沢さんもそうですが、藤原さんもストイックに役作りをされる方で、監督もすごくおもしろがってというか、満足されている様子でした。大変な役へのプロ意識にとても尊敬するものを感じました。
松嶋:そうですね。確かに眠らない現場でしたね。アドレナリンがずっと出ている感じというか、私もあんなに寝なくても平気だったのは珍しいくらいです。三池監督のパワーが全体に伝わっていたんでしょうね。それから三池監督の凄さを感じたのは、自分が欲しい画を妥協することなく、決められた時間内にいかにして収めるかを計算して撮られているところ。すべてに対応されているバランス能力が素晴らしいんです。全てを加味して全体を動かす方なので、本当に凄いと思います。
松嶋:問題提起の映画ですよね。スカっとする話でもないですし、ラストで愕然とさせられたりもする。最近、本当に悲惨な事件がたくさんあるなかで、もし自分が当事者になったらどうするかということを、改めて考えさせてくれる映画だと思います。
松嶋:三池組で新しい役に挑戦することができたので、自分としては全力を尽くしましたし、これまでとは違うイメージの映画に出られたことも収穫でした。私のなかで、映画は万人向けというよりは、すごく味の濃いものだと思っているのですが、そのなかでも、さらに一味違うこの作品に参加できたことが嬉しかったですね。今後もいろんな監督さんと映画を撮っていきたいと思える作品になりました。
(text=望月ふみ)
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