1936年8月18日生まれ、カリフォルニア州出身。舞台俳優として経験を積んだ後、映画に進出。長い下積みを経て『明日に向かって撃て!』(69年)の大ヒットで一躍トップスターに。『スティング』(73年)、『大統領の陰謀』(76年)など数多くのヒット作に出演。『普通の人々』(80年)で監督に初挑戦し、アカデミー賞監督賞を受賞。ブラッド・ピットがブレイクするきっかけとなった『リバー・ランズ・スルー・イット』(92年)や『クイズ・ショウ』(94年)、『モンタナの風に抱かれて』(98年)などを監督。サンダンス映画祭の設立者としても知られる。
『明日に向かって撃て!』(69年)、『大統領の陰謀』(76年)、『愛と哀しみの果て』(85年)など数多くの名作に出演してきた名優にして、初監督作『普通の人々』(80年)でアカデミー賞を受賞したロバート・レッドフォード。数々の秀作を世に送り出してきた彼が5年ぶりに主演・監督を兼務したのが『ランナウェイ/逃亡者』だ。
70年代に活動した実在の過激派グループをモチーフに、そのメンバーだった1人の男の30年間に渡る逃亡生活と、その裏に隠された真実に迫っていく。
本作で、過去を隠しながら、今は模範的な市民として生きるシングルファーザーのジム・グラントを演じたレッドフォードに話を聞いた。
レッドフォード:これは反体制グループの人々の話なんだ。(70年代に存在した)過激派組織・ウェザーマンは、彼らの時代のスタイルや時代の情熱で密接につながっていて、様々な感情と様々な関係が入り乱れているんだ。僕はそれらが影響し合う様子に興味を掻き立てられた。
これは、アメリカの歴史の一部分である出来事を掘り下げて見るチャンスを与えてくれる。これは、実際に我々が教わってきたことの裏側にあるかもしれないアメリカン・ライフの話なんだ。この国のプロパガンダは「この国は素晴らしい国」と主張するけど、我々の国のグレーゾーンを見てみようじゃないか──ということだよ。
レッドフォード:ジムは、「レ・ミゼラブル」の主人公ジャン・バルジャンに似ているように思えたんだ。たったパン1切れを盗んだ罪を問われた彼は脱獄し、身元を偽り生きていく。(元過激派の)ジムにも善人としての人生があり、娘を愛している。けれども過去の苦しみが常に彼を悩ますんだ。こういう人たちはどうやってその苦しみと付き合っていくのか? 彼らは変わるのか、変わらないのか? それを描きたいと思ったんだ。反戦運動そのものじゃなくてね。
レッドフォード:当時、僕は彼らに共感していたよ。当時の僕は家族を養い、キャリアをスタートさせたところだったから、政治的に関わったことは無かったけどね。一方で、当時の(反戦などの)運動に関わった友だちはたくさんいたよ。何が起きていたか実際に見てきたから、その活動の持つ意味は理解できた。人々があそこまで情熱的だったのは、あの頃、徴兵制度があったからだ。今はもう無くなったけど、もし今、徴兵制度があったらまた同じことが繰り返されていると思う。誰もが、時代がどんな意味を持つか知らないままその時代を生きている。振り返ったときに初めて、「あんなことが起きてたんだ」と理解できるものだ。
ウェザーマンのメンバーは、活動の後、歳をとり、それぞれ異なる道を歩んできた。過去に腹を立てるものがいれば、深く後悔するものもいる。行動には結果が伴うものだ。人が決断をすると、その人はその決断を受け入れて、その決断と共に生きていかなくてはならない。でも、それができない人がいるんだ。その点が興味深い。
レッドフォード:本当は、僕は演じながら監督をすることに特に魅力を感じるタイプじゃない。演じているときは演じることに集中したいし、監督するときはオーケストラの指揮者のように状況を見ることに集中したい。1つの楽器の演奏者ではなく、全体がどうつながりストーリーを構成しているかを見たいんだ。2つの役割を行き来することは私にとって簡単ではないんだ。
でも、今回は素晴らしいクルーだったからね。映画を作り上げるのには足並みをそろえなきゃいけない場面がたくさんあると思う。そしてそれぞれの役割がとても重要だからこそ、それぞれの役割に敬意を払うことが大切だと思っている。
レッドフォード:若いアーティストたちと一緒に仕事をするのは刺激的だ。生き生きとするし、自分自身に疑問を投げかけ続けることができる。ラブーフたちは新世代の役者で、新しい社会環境で育ち、新しいアイデアを持っているし、彼らから学ぶことはたくさんあるよ。何かを学ぶのに歳を取り過ぎているとか、成功者だからもう学ぶべきことがないなんてことは決してないんだ。
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