20年に注目したい映画界5大トピックをまとめた。
【1】東京オリンピックに映画界は戦々恐々
19年の映画界は活況に沸き、『君の名は。』『シン・ゴジラ』で沸いた16年に記録した史上最高の2355億円を上回って新記録樹立となりそうだが、20年は一転して厳しい年になりそう。映画界を戦々恐々とさせているのが東京オリンピック・パラリンピックだ。
オリンピックが開催されるのが7月24日から8月9日、続くパラリンピックが8月25日から9月6日。ちょうど夏休みの書き入れ時とぶつかる。どの程度影響を受けるか未知数だが、映画界では「上半期でできるだけ稼ぎたい」と目論んでいる。
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【2】アカデミー賞の行方
20年2月9日(現地時間)に催される第92回アカデミー賞。例年アカデミー賞は2月の最終日曜日、冬季オリンピックがある年は3月の第一日曜に授賞式が行われるが、20年は2月9日に開催される。アカデミー賞の前哨戦となるゴールデングローブ賞は12月9日にノミネートが発表された(授賞式は20年1月5日)。最多6部門でノミネートされた『マリッジ・ストーリー』、次ぐ5部門の『アイリッシュマン』はネットフリックスの製作。19年の『ROMA/ローマ』の時のようにアカデミー賞でも旋風&物議を巻き起こすか注目だ。
アメコミ映画界をリードしてきたマーベルは19年、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でアイアンマンとキャプテン・アメリカが卒業。続く『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』でフェイズ3が終了した。20年5月1日公開『ブラック・ウィドウ』からフェイズ4がスタートするが、続く11月公開『エターナルズ』は新キャラクターなので、興行がどうなるか未知数だ。
一方19年、DC映画は『アクアマン』『ジョーカー』が大ヒットとなり、マーベルに押されていた状況に復活ののろしを挙げた。20年は『スーサイド・スクワッド』の人気キャラクター、ハーレイ・クインを主人公にした『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』、『ワンダーウーマン1984』が控え、マーベルを上回る大ヒットになる可能性は十分だ。
【4】動画配信戦争の行方
米国やカナダで11月12日から動画配信サービス「ディズニー+」がスタートし、初日の登録者数が1000万人を超え、話題を集めた。11月1日からは「アップルTV+」が日本を含む世界100以上の国と地域でスタート。登録さえすればiPhoneやiPadですぐ視聴できるのが強みだ。登録者数の発表はないが、9つのオリジナル番組を配信。中でもジェニファー・アニストンとリース・ウィザースプーンという人気俳優が顔を揃えた『ザ・モーニングショー』が話題を集めた。
20年はワーナーメディアが5月に「HBO Max」をスタートさせる。先ごろ人気番組『フレンズ』全236話の権利を獲得。現在ネットフリックスで配信されている『フレンズ』は今後、HBO Maxに移行される。また同社はスタジオジブリと米国内での独占配信契約を結んだ。さらに、クリステン・ベルがカムバックするリブート版『ゴシップガール』、ライアン・レイノルズ主演で映画化されたアメコミ『グリーン・ランタン』のドラマ化を準備中だ。
一方、新興勢力に追われる立場のネットフリックスは大ヒットドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のクリエイターコンビ、デビッド・ベニオフとD・B・ワイスと契約を結んだ。オリジナル作品に今後も注力していくとみられる。
映画業界紙「バラエティ」によると、12月下旬の時点で中国の映画市場は過去最高の86.7億ドルを上回った。最終的な数字はまだ分からないが、もう少し上になりそう。一方、米国の映画市場は近年110億ドル台で推移しており、19年も110億ドル台になりそう。「いずれ中国市場が米国市場を抜き、世界一の映画市場になる」と予測されてはいるが、20年にいよいよ達成するか注目だ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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