東野圭吾の原作で、阿部寛が刑事の加賀恭一郎を演じる人気シリーズの映画版『麒麟の翼〜劇場版・新参者〜』。この作品が1月28日に公開初日を迎え、TOHOシネマズ日劇で行われた舞台挨拶に主演の阿部寛のほか、ヒロイン役の新垣結衣、共演の中井貴一、溝端淳平、田中麗奈、松坂桃李、三浦貴大、土井裕泰監督の総勢8名が登壇した。
阿部は「加賀恭一郎シリーズはドラマのときからみなさんに愛していただき、今回の映画版ではより深い人間ドラマが完成したと思います。本当に感無量です」と挨拶、新垣も「やっと今日を迎えられたという感じがして胸が熱くなっています。本当に幸せです」と感激しきりの様子だった。
本作は中井扮する被害者の青柳と、松坂扮するその息子・悠人の父子愛が1つのテーマになっている。松坂が「悠人という役を演じることで、父との関係性なども考えるようになりました。そういう風に自分がなれたのは、中井さんが現場で父として存在してくれたから」と感謝を述べると、中井も「今の世の中は家族がバラバラになっているのが一番の問題で、父親と子ども、母親と子どもといった関係をきっちりさせることで日本はよくなっていくと思います。そこら辺をこの映画は大切にしているので、やらせていただいた。桃李くんがいい奴なので、一緒に(劇中で使われる)鶴を折ったんですよ」と目を細めた。
感動のドラマに笑いの要素をもたらしているのが、加賀と相棒の松宮との掛け合いだ。松宮刑事役を演じる溝端は、「阿部さんの胸を借りながらいろいろなアドリブを入れていたら、土井監督に『早くしろ』と言われました(笑)。阿部さんとコンビを組ませていただいた時間は、すごく貴重でありがたいことです」と先輩との共演を喜んだ。
看護師の登紀子を演じた田中は、「加賀は何を考えているかわからないところがあって、雰囲気が色っぽい。でも、今回は叱りつけてやりました」とイタズラっぽく笑い、土井監督も「今回は加賀という人間を今までのシリーズよりも、もうちょっと生っぽい人間というか、加賀の怒りや悲しみ、喜びを出したいという狙いがありました。そういう意味で登紀子はとても大事な役でした」と振り返った。
また三浦は、父親の三浦友和がドラマ版に出演していたことについて質問され、「出るということも言ってなくて。わざわざ電話で言うほどでもないかなと(笑)」と答え笑いを誘っていた。
最後に新垣は、「身近だけれど距離ができてしまう家族や恋人などは多いと思います。私もそうでした。家族との距離がすごく開いてしまった時期もありましたし、若干、今も引きずっていると思いますが、今回こういった素晴らしい作品に出会って、自分自身も家族や大切な友だちに対する思いをより素直に表現できるようになった気がします」と自らの経験と重ね合わせて観客に語りかけた。
この言葉を受け、阿部も「新垣さんの話を聞いていて、親父が浮かびました。80歳を過ぎていますが、今日もここに来ているなぁ。この年になって、親父とよく話すんです。この間、戦争のときの話を聞いたら僕が歴史上で知っているような単語がリアルに出てきて、『ああそうか、親父は経験してきたんだな』と思ったんですね。もっといろんな話を早くするべきだったな、と。この映画で中井貴一さんが演じた父親像はすごく自分の胸を打ちましたし、この映画から僕自身も多くのことを学ばせていただきました。みなさんもこの映画がいいきっかけになって、心のなかに何かが生まれ、それがいつの日か役に立っていただけたら」と語り、その熱いメッセージに観客は大きな拍手を送っていた。
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