スランプに陥り、前進する気力を失ってしまった36歳のマンガ家・菜都美。映画『女の子ものがたり』では、深津絵里扮する菜都美(なつみ)が、忘れかけていた少女時代を振り返り、自分の立ち位置を再発見していく姿が描かれていく。原作は、『毎日かあさん』や『恨ミシュラン』などで人気のマンガ家・西原理恵子の同名マンガ。女の子たちの過酷な現状と、それでも健気に生きていく姿が胸を打つ物語を紡ぎ出した西原に、映画について、そして女の子たちへのメッセージを語ってもらった。
──原作は自伝的な作品ということですが、映画化されたことについての感慨などは?
西原理恵子(以下、西原):(マンガに描かれた過酷な状況の中から)なんで、自分だけ抜け出せたのかという不思議な思いがありますね。それと、すべての女性たちに見てほしいですね。女が自立していくことは大変なんだけど、後輩の女の子たちに、「やっぱり自分の足で立って、歩いて行ってください」って言いたいな、と。「色々あったよね、これからも色々あるからね」って(笑)。
女の人は、人生を引き返すと、前より環境が悪くなるんですよ。ちょっと歳がいくと、巻き返しもきかないし。とにかく、現状に負けず、前進するしかないんです。
人生で一番良かったのが、20歳頃に男の人にご飯をおごってもらったりプレゼントをもらったことだなんて、悲しすぎるでしょ? あと60年、生きなきゃいけないのに。
──原作には人生の影の部分がかなり描かれていますが、それに比べると映画はファンタジックな印象を受けました。
西原:原作は影の部分だらけだけど、映画は夢と希望を与えないといけないから、せめて女の子はキレイじゃないとね(笑)。
──6月には西原さんの原作を映画化した『いけちゃんとぼく』が、8月に本作が公開され、来年5月には菅野美穂さん主演の『パーマネント野バラ』が公開予定など、最近、映画化が相次いでいますが、なぜだと思いますか?
西原:不況に強かったかな、と。景気が良かったら、もっとお金のかかる大作を映画化するんだろうけど。
私の作品は、現実はキッチリ描くけど、最後はちょっとだけ笑っていただけるところがある。それが不況に強い理由かな。みなさん、精神的にキツい局面なので、夢みたいなセレブ生活なんて見たくないのかもしれませんね。
──少女時代の自分に出会ったら、何て言ってあげたいですか?
西原:「将来、すごく楽しいんだよ」って。でも、きっと信じないでしょうね。将来のことが心配で心配で仕方がなくて、絶望しかなかったから。でも、心配だから働くし、心配だから仕事を断らないので、そのまま頑張ってもらいたいですね。
──当時よりも今の方が幸せですか?
西原:若い頃には二度と戻りたくないですね。自分が周りにどう見られるかだけを考え、髪型や服装のことばかり気にして。何のキャリアもなく……。今が一番いいですね。
──西原さんにとって、人生のモットーはなんですか?
西原:働くことです。それは、私にとって宗教みたいなものですね。八百屋のおばちゃんなんかは、どんなに具合が悪くても大根1本のお客さんに頭を下げるじゃないですか。あれですよ。身体を動かさないと。
──この物語に込めた思いを、最後にもう一度、語っていただけますか。
西原:女の人は、自立しろって言われたり家に入れって言われたり、最後には介護を任せられて、何のためにおまえがいるんだって言われたり、色んな状況で色んなことを求められて、本当に大変なんです。男の人はとんでもないことを言い出しますからね(笑)。
だから、女性にとってはやっぱり、自立することがとても大事だと思います。原作では、自立しないと、どういう辛いことが待っているかを伝えたつもりです。
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