マイケル・J・フォックス
80年代らしさを象徴する作品でいて、時代を超える面白さを持つ不朽のエンターテインメント作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ。主演のマイケル・J・フォックスは軽妙な演技と清潔感あるルックスで、その後も『摩天楼はバラ色に』や『ハード・ウェイ』などコメディ作を中心に、ベトナム戦争に出征した兵士役でショーン・ペンと共演した『カジュアリティーズ』のようなシリアスな作品にも出演し、順調なキャリアを築いていた。
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だが、90年代半ばから少しずつその活躍に変化が表れる。映画に出演しても主役ではなく脇に回るようになったのは、テレビシリーズ『スピン・シティ』で主演をつとめるようになったから。そう思いながらも、誰もが画面上のマイケルの表情や挙動のかすかな変調に気づいていた。そしてついに1998年、マイケルはパーキンソン病を患っていることを公表し、2年後には症状の悪化に伴い、『スピン・シティ』を降板、以降は声優として、『スチュアート・リトル』シリーズなどで活動するようになった。
近年は、時折テレビドラマにゲスト出演するかたわら、「マイケル・J・フォックス パーキンソン病リサーチ財団」を設立。半生と闘病について綴った自伝「ラッキー・マン」を発表し、パーキンソン病の研究を支援する活動に力を入れていたが、昨年9月、13年ぶりにアメリカのNBCでテレビシリーズ、その名も『マイケル・J・フォックス・ショウ』に主演で復帰。日本でも4月25日からスーパー!ドラマTVで放送が始まった。
マイケルが演じるのは、元人気キャスターのマイケル・ヘンリー。5年前にパーキンソン病を患い、仕事を辞めて妻や3人の子どもと暮らしていたが、親友でもある元上司に懇願され、復帰を決意する。番組タイトルといい、設定といい、マイケルの自伝的といってもいい作品だ。病気の症状が引き起こす出来事を笑いに変えていく。復帰した彼に対して、おずおずと、また少々ドラマチックに接する職場の仲間たち。一方、日常を共にする家族は遠慮なしの対応ぶりだが、そこには同情ではない配慮がある。患者として、サポートする者として、病とどう向き合うかを、笑って見ているうちに学べている。
同情を誘わない作劇は、マイケルが演じるからこそ成立する。普通に一緒に笑い合える。その喜びが伝わってくる。マイケルは出世作である80年代のテレビシリーズ『ファミリー・タイズ』で共演したトレイシー・ポランと結婚、4人の子どもをもうけ、今も仲むつまじい。ドラマにはマイケル自身の実体験を通したアイデアが反映されているという。苦境を逆手にとり、自分にしか表現できないものを作り上げる。その姿に人はどれだけ鼓舞されるか。勇気を笑いという形で提供する、その姿勢は清々しく頼もしい。(文:冨永由紀/映画ライター)
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