ディズニーアニメが宮崎アニメを超えた──。『アナと雪の女王』の興行収入は、7月6日時点で246億円。宮崎監督作の『もののけ姫』や『ハウルの動く城』を上回り、日本映画界では『千と千尋の神隠し』『タイタニック』に次ぐ歴代興行成績3位を記録している。ディズニーアニメが宮崎アニメと同じく「国民的アニメ」になったわけだが、ここまでの道のりは挫折と復活の繰り返しだった。1937年『白雪姫』から始まった長編ディズニーアニメーション映画を5期に分けて解説する。
・出演料の低下で製作しやすく…ハリウッドの老スター映画が増えるワケ
第1期はスタート時からウォルト・ディズニーの死去まで。『白雪姫』(37年)、『ピノキオ』(40年)、『シンデレラ』(50年)、『眠れる森の美女』(59年)など数々の名作を生み出す黄金期は、ウォルト・ディズニー自身が引っ張っていた。
第2期は、66年のウォルト死去後から80年代前半まで。彼が亡くなると、アニメーション部門は徐々に縮小されて製作ペースが鈍り、3〜4年に1本しか公開できなくなる。
第3期は80年代後半から90年代まで。84年にディズニーのCEOとして迎えられたマイケル・アイズナーはアニメ制作の強化に着手。86年、88年と新作を公開し、89年に『リトル・マーメイド』が大ヒットする。映画のヒット以上にディズニーアニメにとって意義深かったのは、アカデミー賞で作曲賞と主題歌賞を受賞したことだ。ディズニーアニメが主題歌賞を受賞するのは、40年『ピノキオ』で受賞して以来、約50年ぶりのこと。ミュージカル・ナンバーの数々が映画を盛り上げる「ディズニーミュージカルアニメ」の復活ともいえる。
復活の立役者が、主題歌と作曲を手がけたアラン・メンケンだ。『リトル・マーメイド』に続き、91年『美女と野獣』、92年『アラジン』の主題歌と作曲も担当し両部門でアカデミー賞を受賞。ディズニーアニメは第2次黄金期を迎える。『美女と野獣』や94年『ライオン・キング』はブロードウェイのミュージカルになり、多面展開された。
第4期は2000年代。「男の子路線」が振るわず、ライバルのピクサーの快進撃に押された。01年『アトランティス/失われた帝国』、02年『トレジャー・プラネット』では、従来のディズニーミュージカルアニメと異なり、青年を主人公にした冒険ドラマを製作したが、興収は伸び悩んだ。
当時旋風を巻き起こしていたのがピクサーだ。95年に世界初の長編CGアニメーション『トイ・ストーリー』を公開し、98年に2作目、その後は1〜2年に1本のペースで製作を続け、連続大ヒットを記録している。オモチャやモンスターの世界などユニークな物語設定にしながらも、友情や家族の絆などを描き、普遍的な感動を伝えるストーリーでディズニーアニメのお株を奪った。98年にはドリームワークスアニメーション、02年には20世紀フォックスアニメーションがCGアニメ製作に参入。ディズニーアニメはライバルにつぶされた格好だ。
第5期は2000年代末から現在。ディズニーではマイケル・アイズナーの長期政権の後、05年にロバート・アイガーがCEOに就任する。06年にピクサーを買収し、中心的クリエイターのジョン・ラセターを、ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのクリエイティブ部門最高責任者も兼務させ、ディズニーアニメの立て直しに着手させる。
ピクサーでは、監督やストーリー作りの担当者などがチームを組み、意見を出し合って何度も修正を加えながら、ストーリーを練っていく。彼はこの手法をディズニーアニメにも導入した。08年に“新生ディズニーアニメ”1作目を公開して以降、09年と10年の新作ではディズニーミュージカルアニメを復活させたり、12年の新作ではゲームの世界を舞台にしたり、13年『アナと雪の女王』では初めてWヒロインにするなど、作品の中身も変化させた。『アナと雪の女王』がディズニーアニメ興行成績新記録を樹立し、3度目の黄金期に入る。
ディズニーアニメの次回作は『ベイマックス』(米国公開11月、日本公開12月20日)。少年発明家ヒロと、謎の死を遂げた兄が遺したロボットが繰り広げるアクション・アドベンチャーだ。再び「男の子路線」を製作し、さらなる躍進を狙う。(文:相良智弘/フリーライター)
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