日本映画界には子ども向け映画の長寿シリーズが数多く存在する。“最長寿”が『ドラえもん』で毎年春に公開される。今から34年前、1980年に映画版1作目『のび太の恐竜』が公開され、以降多くの作品で興収20億〜30億円以上を記録している。映画版の人気の秘密が、テレビ版では見られない内容であること。テレビ版よりもアドベンチャーの要素が強い。のび太が主役&ヒーローとして仲間と協力して困難に立ち向かい、子どもたちの冒険心を刺激してきた。笑いながら見られるテレビ版とは異なり、映画版は涙がホロリとこぼれることもしばしばだ。
・『STAND BY ME ドラえもん』が海外でも大人気! 世界21の国と地域で配給が決定!
映画版の客層を見ると、今年の『新・のび太の大魔境 〜ペコと5人の探検隊〜』は、男女比60対40、0〜5歳が22.6%、6〜9歳が18.7%、10〜12歳が14.3%、親世代の30〜50代が29.4%(配給元の東宝発表、以下同じ)。幼稚園・保育園から小学生が客層で、中学生になると“卒業”するパターンだ。興収は35.8億円を記録している。
春公開の『ドラえもん』だが、今年初めて夏にも公開された。名エピソードを集めて3DCG化した『STAND BY ME ドラえもん』で、現在大ヒットしている。
『クレヨンしんちゃん』は毎年4月に公開される。1993年公開の『アクション仮面VSハイグレ魔王』から始まったが、多くの作品で興収10億〜15億円を記録している。『ドラえもん』と同じく映画版はテレビ版と異なり、「突然襲い掛かる敵に対し、野原一家が力を合わせて戦う」というストーリーで感動的な内容が多い。今年の『ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』の客層は男女比が71対29、小学4〜6年生が25.8%、小学1〜3年生が21.3%、幼稚園・保育園が13.5%、中学生が10.1%、親世代の40〜50代が12.9%。興収は18.2億円を記録し、2000年以降では最大のヒットとなっている。
『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』はテレビ朝日系で毎週木曜19時から30分ずつ立て続けに放送されているが、視聴率ではあまり差がない。ビデオリサーチ調べの8月8日の視聴率は『ドラえもん』が9.1%に対し、『クレヨンしんちゃん』が10.3%。だが、興行成績では『ドラえもん』が『クレヨンしんちゃん』の約2倍となっている。なお、製作するアニメプロダクションは『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』ともシンエイ動画で、テレビシリーズを放映するテレビ朝日の子会社でもある。
『ポケットモンスター』も2作と同じく幼稚園・保育園から小学生が中心客層だ。98年に1作目『ポケットモンスター/ミューツーの逆襲』が公開され、配給収入41.5億円(興収換算で83億円)をあげる社会現象を記録した。映画版はゲーム&テレビと連動しており、登場するキャラクターや舞台設定によっていくつかのシリーズに分かれている。これまでに『ポケットモンスター』『ポケットモンスター アドバンスジェネレーション』『ポケットモンスター ダイヤモンド&パール』『ポケットモンスター ベストウイッシュ』と続き、現在は『ポケットモンスター XY』(映画版のタイトルは『ポケモン・ザ・ムービーXY』)が最新シリーズだ。
興収は25億〜50億円と幅がある。まず新シリーズ1作目が高い興収を上げ、回を重ねるごとに下がる。そして新たなシリーズで再び上向く、というパターンが続いてきた。
公開中の『ポケモン・ザ・ムービーXY/破壊の繭とディアンシー』の客層は男女比67対33、小学生51.2%、幼稚園・保育園が12.8%、30代以上が(親世代)22.3%。今作は11〜13年と続いた『ベストウイッシュ』に代わる新シリーズ第1弾だ。公開後23日間で興収は19億円で、前作とほぼ同じ。「新シリーズの1作目が高い興収を上げる」パターンから考えると、やや物足りない出足となっている。『ポケモン』は映画の前売り券を買うとゲームで使える特別キャラクターがもらえるのが強みだが、やや効かなくなっているのかもしれない。また『ポケモン』の中心客層である小学生の間では『妖怪ウォッチ』が大人気となっており、影響を受けているとも思われる。
アニメプロダクションはOLMで、『ポケモン』の映画やテレビシリーズの他、『妖怪ウォッチ』『バディファイト』『ドラゴンコレクション』などを製作している。(文:相良智弘/フリーライター)
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