ボスニア紛争により壊滅的な被害を受けたボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボを舞台にした『サラエボ,希望の街角』。戦争の傷跡に苦しみ、愛する人との関係に悩みながらも、未来に向けて歩き出すヒロインの姿が胸を打つ感動作だ。監督は、前作『サラエボの花』でベルリン国際映画祭の最高賞・金熊賞を受賞したヤスミラ・ジュバニッチ。サラエボに生まれ、この街をこよなく愛する彼女に、映画について話を聞いた。
──この映画を作ったきっかけについて教えてください。
監督:恋愛関係において“他人”を受け入れるということについて探ってみたかったんです。映画では、日常生活にまぎれこんだ些細な障害が、愛し合う2人に変化をもたらしますが、恋愛関係のなかで自分自身に正直でいられるかどうかを突き詰めてみたかったんです。
──前作『サラエボの花』は、紛争中にレイプされた女性とその娘との母子の葛藤を描いた作品でしたが、本作は、子どもを生むべきかどうか選択する女性の内面的な変化を描いていますね。
監督:『サラエボの花』の主人公には、産むか産まないかの選択肢はありませんでした。収容所でレイプされ、中絶できない時期まで監禁されていたからです。一方、本作の主人公は、仕事を持ち、恋人と暮らす女性。最初は子どもを望んでいますが、状況が変わり、女性としての根本的な疑問を持ち始めます。『サラエボの花』とは違って、今回重要だったのは、彼女の人生は彼女自身で決めることができるということです。
──紛争前のサラエボは美しく、異なる民族や宗教が共存する理想的な街だったそうですが、現在は一変してしまいました。不条理で不寛容な社会状況は世界的な現象ですが、監督の考えるサラエボの未来とは?
監督:私もその答えを知りたいんです(笑)。ただ、明確な答えはないように思います。サラエボは、もっとポジティブな形で、過去のトラウマから抜け出す方法を見つけなければいけませんが、経済的状況により簡単ではありません。
──最後に、日本の観客へのメッセージをお願いします。
監督:この映画を日本の方々に見ていただく機会を与えてもらい、とても光栄です。映画を気に入ってもらえると何よりです。今回、日本から持ち帰った2つのものを映画のなかに取り入れています。どなたか気づいたら教えてください。
『サラエボ,希望の街角』は2月19日より岩波ホールほかにて全国順次公開される。
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