カメラ6台同時回し…撮影中に編集も! 83歳のリドリー・スコット監督が凄いワケ
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『最後の決闘裁判』リドリー・スコット監督の秘密に迫る!
リドリー・スコット監督がマット・デイモン、アダム・ドライバー、ベン・アフレックを迎え、歴史を変えた世紀のスキャンダルを描く実話ミステリー『最後の決闘裁判』。公開が10月15日に迫るいま、今年ヴェネチア国際映画祭とカルティエが創設した「Cartier Glory to the Filmmaker Award」初代受賞者に輝いたリドリー監督が再注目を浴びている。
リドリー監督といえば、思えばデビュー作も決闘モノの『デュエリスト/決闘者』。この作品で、カンヌ国際映画祭新人監督賞を受賞している。
その後、1979年に手がけた『エイリアン』が世界的大ヒットを収め、『ブレード・ランナー』(82年)、『テルマ・ルイーズ』(91年)、『グラディエーター』(00年)、『ハンニバル』(01年)、『アメリカン・ギャングスター』(07年)、『プロメテウス』(14年)と、SFからクライム・サスペンス、歴史劇まで、幅広いジャンルでヒット作を生み出し続けた。
さらに、来年22年公開予定の『ハウス・オブ・グッチ』、ジョディ・カマーとホアキン・フェニックスの共演でナポレオン1世を描いた『Kitbag(原題)』と、期待作が予定され、その後にはいよいよ『グラディエーター』の続編着手も囁かれている。
他にはない特徴的な撮影方法にベン・アフレックやマット・デイモンも驚嘆!
御年83歳にしてなおエネルギッシュに圧巻の映像を作り続けるリドリー監督の経歴は、まさにビジュアリストというべきもの。
リドリー監督は、ウェストハートルプール美術大学、ロンドン王立美術大学でグラフィックデザインなどを学んだ後、BBCに入社。退社後は、CM制作会社RSAを設立し、CM監督として活躍した。
こうした経歴を知ると、撮影・音楽・衣装といった芸術面や、美術・セットの細部を吟味し、ジャンルにこだわらずリアリティあふれる作品作りをこなせるリドリー監督の背景が浮かび上がってくる。
とくに撮影方法は、複数のカメラを用い360度全方向に向けることで知られている。
これについて、アカデミー賞作品賞受賞監督でもあるベン・アフレックは次のように語っている。
「リドリーのとても特徴的な撮影方法を間近で見られるのは、とても興奮する出来事だった。各カメラがそれぞれの方向を向いていることによって、信じられないほどのエネルギーが生まれる。演じる者たちは、自分らがいつカメラに捉えられているか分からない緊張感が、素晴らしい切迫感と即時性を作り出すんだ」
一方、「リドリーは光のことを実によく理解していて、どうやったら撮影ショットを非常にハイレベルに進化したフレームに出来るかを熟知している」と語るのは、マット・デイモン。
「リドリーは、トレーラー上にカメラを設置していく時に、まずフロアのほうに自分で歩いて行ってそのシーンを自分でリハーサルしてから、カメラを4台設置し、それに対して撮影監督ダリウス・ウォルスキーが照明を提供する。それからリドリーはトラックに戻って自らカメラを操作し、何が映るかを確認する。これは、彼が最初にこの仕事を始めた時にやっていた方法の、より手の込んだバージョンといえる。こうすれば、ショットがどう仕上がるか、どうやったら欲しいショットにたどり着けるかが分かる。4台のカメラにそれぞれ着いた操作のプロが、無線機で監督からの指示を受けてショットの調整をしていくわけだ」
マットが言うには、いくつかのシーンでは撮影カメラ6台を同時に回して撮影したり、撮影の最中に編集を行うといった点でも珍しい監督だという。
映像の美しさ以前に大切なのは、コンセプトであり文脈
もちろん本作品では、優れた映像作品を作り上げるために、リドリー監督以外にも優秀なチームが活躍している。
前述の撮影監督ダリウス・ウォルスキー(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ、『プロメテウス』『オデッセイ』)のほか、プロダクション・デザイナーにアーサー・マックス(『グラディエーター』を皮切りにスコットと組んだ13作目の映画、『オデッセイ』でアカデミー賞ノミネート)、編集にクレア・シンプソン(『プラトーン』でアカデミー賞受賞)、衣装デザイナーにジャンティ・イェーツ(『グラディエーター』でアカデミー賞受賞)、作曲にハリー・グレッグソン=ウィリアムズ(『プロメテウス』『オデッセイ』)らが支える。
とはいえ、監督が重視しているのは単なる映像美だけでなく、一番大切なのは作品のコンセプトであり、文脈だと語る。
「私はこれまでにやっていない素材を見つけるのが好きで、新鮮でそれまでとは違うものをいつも探している。ミュージカルはやったことがないし、ウエスタンもやったことがない。だからそういうものを見つけようとしている。だが、この作品に関して言うと、この時代はとても親しみが持てて、十字軍の物語なんかも同じような時代のものだよね、そういったものは分かりやすいし、与しやすい。だが、最も大事なのは、コンセプトであり文脈なんだ。この作品についていえば、3つの異なる視点があるという点がとても興味深くてね。それがどの時代か、どの世紀かなんてことは関係がない。私にとってはそれが一番大事なことだったんだ。文脈がね」
そんな監督の目利きに応え、生々しく鮮烈なアクションと中性フランスを再現した繊細な映像表現が発揮された『決闘裁判』。カメラのアングルや光脈にもぜひ注目して見て欲しい。
史実に基づくミステリー! 黒澤明『羅生門』のような視点誘導に刮目せよ
本作品は、 中世フランスを舞台に、騎士の妻マルグリットが夫の旧友に乱暴されたと訴えたことに端を発し、夫と被告による生死を賭けて始まった“決闘裁判”の模様を実話に基づいて描く。
黒澤明『羅生門』のように、事件を告発した被害者・マルグリット、その夫・カルージュ、被告のル・グリの3人の視点による3幕構成となっているのも魅力の作品だ。
果たして、裁かれるべきは誰なのか? あなたが、この裁判の証人となる。
『最後の決闘裁判』は、10月15日に全国公開される。
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