ディズニー+が追撃
動画配信サービスは、20年に新型コロナウイルスの感染拡大による巣ごもり需要を追い風に大幅に会員を獲得した。21年は20年ほどではないが、着実に会員数を伸ばした。ネットフリックスの世界の会員数は9月末時点で2億1356万人。20年9月末時点では1億9515万人だったので、1800万人以上増えた。牽引役の1つが韓国ドラマ『イカゲーム』だ。借金を抱えた主人公たちが自らの命を懸けて賞金稼ぎのデスゲームに挑むドラマで9月から配信を開始。視聴者数は配信後4週間で1億4200万世帯にのぼった。韓国や韓流ファンの多い日本だけではなく、米国や欧州を含む94ヵ国・地域で視聴者数首位となった。
ネットフリックスを追うディズニー+は10月2日時点で1億1810万人。20年10月3日時点では7370万人だったので4400万人以上増えた。ディズニープラスのオリジナル作品が牽引役で、『スター・ウォーズ』シリーズの実写ドラマ『マンダロリアン』シーズン2やアニメシリーズ『スター・ウォーズ:ビジョンズ』、マーベルの人気キャラクターを主人公にした『ワンダヴィジョン』『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』、マーベルのアニメシリーズ『ホワット・イフ…?』、映画『モンスターズ・インク』のその後を描くアニメシリーズ『モンスターズ・ワーク』などが配信された。
ディズニーが所有する他の動画配信サービス「Hulu」は4380万人、ESPNプラスは1710万人の会員を獲得しており、3つ合わせると1億7900万人。ネットフリックスを追撃する。
ワーナーメディア傘下のHBO Maxの会員数は9月末時点で4170万人。20年12月25日公開の『ワンダーウーマン1984』から新作映画を劇場公開と同時に配信。『ゴジラvsコング』『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』『DUNE デューン 砂の惑星』といった話題作も配信されたことで会員増に貢献したと推測される。
動画配信サービスをめぐり、2つの大型買収劇があった。1つはワーナーメディアとディスカバリーの統合。米通信大手AT&Tは傘下のメディア事業「ワーナーメディア」を分離し、メディア大手ディスカバリーと統合して新会社を設立すると5月17日に発表した。新会社はディスカバリーのデビッド・ザスラフCEOが率いる。AT&Tが株式の71%、ディスカバリーが29%を持つ。当局の審査などを経て、22年半ばの手続き完了を目指している。新会社が動き出すのは22年になるが、ワーナーメディア傘下のHBO Maxの会員数は4170万人、ディスカバリーは2000万人(ディスカバリープラスやフードネットワークキッチンなどの動画配信サービスの合計)。両社を統合してネットフリックス、ディズニープラスに次ぐ第三極を狙う。
もう1つはアマゾン・ドット・コムによるメトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)の買収だ。買収額は84億5000万ドル(9200億円)。MGMは『007』『ロッキー』『ロボコップ』シリーズなどの製作で知られる。アマゾンは有料サービス「アマゾンプライム」会員向けの動画コンテンツを拡充する狙いだ。新作『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開に合わせて、『007』シリーズを会員向けに配信し、早速買収効果を出した。
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