第37回トロント国際映画祭で9月10日に『夢売るふたり』が上映され、西川美和監督が舞台挨拶とQ&Aを行った。
・幸せに対する強力なアンチテーゼ。恐ろしささえ呼び起こす西川美和監督作
同映画祭は北米最大規模の映画祭で、アカデミー賞の前哨戦とも言われている。師匠の是枝裕和監督からその良さをいつも聞いていたという西川監督は、舞台挨拶で「ここに来ることができて本当に嬉しい」と参加の喜びを語った。
客席は満席で、上映後の会場は拍手喝采に包まれた。そんななかで観客たちからの質問に答えた西川監督。オリジナルの脚本にこだわる理由を聞かれると「今の日本では原作がある映画がほとんど」と日本の現状を説明してから、「物語を作るのは一番大変で苦しいけれど、最もやりがいを感じる作業。私の場合は、自分で作った物語だからこそ責任をもって監督ができる。だから、オリジナルの脚本を書くことは今後も続けていきたい」と意欲を語った。
同作は、火事ですべてを失った夫婦が再出発のために結婚詐欺を企てるという物語。妻が計画し、夫が女たちを騙す姿を通じ、男と女の心の闇を描いていく。そんな物語に関して、結婚詐欺に騙される女性への警告の意図もあったのかと聞かれた西川監督は「考えていませんでしたが、今の日本では女性の生き方が多様化し、いろいろな選択肢があり、その分、悩みが多くて生きづらい世の中になっていると感じます。そんな女性たちの悩みを描きたいという思いがありました。満足しているように見える女性でも、どこか欠落していて、そこにつけ込まれることは誰にでもあると思います。誰でも詐欺に遭う可能性はあるのではないか」と答えてから、「だから気をつけてくださいね」と笑顔で付け加えていた。
トロント国際映画祭は9月6日〜16日まで開催。ノン・コンペの映画祭のため、観客賞(ピープルズ・チョイス・アワード)が最高賞となる。『夢売るふたり』はこの後、9月27日から開幕する第31回バンクーバー映画祭、10月10日から開催される第56回ロンドン映画祭。10月11日から開催される第48回シカゴ国際映画祭などに出品される予定だ。
『夢売るふたり』は新宿ピカデリーほかにて公開中。
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