若松孝二監督が76歳で死去。寺島しのぶ、山本太郎、高岡蒼佑が悲しみ綴る

若松孝二監督
若松孝二監督
若松孝二監督
『キャタピラー』公開初日の寺島しのぶ(左)と若松孝二監督

映画『キャタピラー』で女優・寺島しのぶにベルリン国際映画祭銀熊賞(最優秀女優賞)をもたらした若松孝二監督が、10月17日午後11時5分に東京都内の病院で死去した。76歳だった。

[動画]若松孝二監督インタビュー

若松監督は12日、新宿区内でタクシーにはねられ腰などを強打。当初は命に別状はないという報道がなされていたが、監督が率いる若松プロダクションの発表によると、事故直後に病院に搬送されてから意識不明の状態が続いていたという。

1963年にピンク映画『甘い罠』で映画監督デビューした若松監督。同作は低予算ながらも圧倒的な迫力で、ピンク映画としては異例の集客力を見せた。以後、人間の根源的な要素であるエロスと暴力をテーマにした作品を次々に発表し、“ピンク映画の黒澤明”とも評された。

また、大島渚監督の問題作『愛のコリーダ』(76年)ではプロデューサーをつとめ、連合赤軍をテーマにした『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(07年)ではベルリン国際映画祭最優秀賞アジア映画賞(NETPAC賞)を受賞。銃後を守る女性の立場から戦争を描いた『キャタピラー』(10年)では、主演の寺島がベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞するなど、海外でも高い評価を得ていた。

作品作りの原点は“怒り”だと話し、また、インタビューでは母への思いから女性への尊敬を口にしていた若松監督。武闘派のイメージも強いが、『キャタピラー』の福士織絵助監督は「お茶目で、優しい監督」と語っていた。

遺作となった『千年の愉楽』にも主演した寺島は自身のブログで、人を驚かせることが好きだった茶目っ気のある監督の素顔に触れ、「私の出産を本当に喜んで、早く見たいと言ってくださっていた監督、心優しい監督、弱い者の味方で、強いものにはくってかかる監督、お酒と美味しいものが大好きな監督、何よりも映画を作り上げることに執念を燃やした監督。今いったい、いったいどこにいらっしゃるんですか?」(原文ママ)と悲しみを綴った。

同じく『千年の愉楽』に出演している山本太郎はツイッターで「 『次は原発の映画撮るから』と、脚本家の方を紹介して下さった。次はドップリ若松組で濃い作品作りに参加させて貰えるかも、と胸がときめいた。 今生ではもうお逢いする事は出来ないんだな」とつぶやき、高岡蒼佑はフェイスブックで「今は来年にかけての楽しみが空っぽになった気がします。本当の親父のような温かさ…忘れません。最後におっしゃってくれた言葉の数々を心に刻み、大事に、大事に、走ります。自分からの言葉は会った時にお伝えします。どうか安らかにお休みください」と綴っている。

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