『009 RE:CYBORG』
戦争によって世界を支配しようと企む「黒い幽霊団(ブラックゴースト)」によって生み出された、ゼロゼロナンバーを持つ9人のサイボーグ戦士たち。彼らを改造したひとりで、ブラックゴーストに騙されていたギルモア博士は、9人目の戦士、009こと島村ジョーらと共に脱出する。そして野望を抱き続けるブラックゴーストとの長い闘いが火ぶたを切るのだった。
故・石ノ森章太郎の未完の大作「サイボーグ009」。1964年に連載を開始し、その後、アニメ化され、また映画化もされてきた超人気SFマンガが、石ノ森亡き今、3DCGアニメーション映画『009 RE:CYBORG』として、我々の前に姿を現す。009たちの戦いはブラックゴースト本体と対峙する「地下帝国“ヨミ”編」で、一応の終結を見せる。ではなぜ、今でも「サイボーグ009」は“未完の大作”と呼ばれ続けるのか。一旦、『009 RE:CYBORG』のあらすじに目を向けてみたい。
2013年、世界中で同時多発爆破テロ事件が発生。ギルモア博士(声:勝部演之)のもとに集まるサイボーグ戦士たち。これまで3年ごとに記憶をリセットされ、高校生として暮らしてきた島村ジョー(声:宮野真守)は、003ことフランソワーズ(声:斎藤千和)と005ことジェロニモ(声:丹沢晃之)の手により記憶を取り戻す。だが、ジョーは記憶が戻る以前、“彼の声”を聞いており、自分もテロ行為を行おうとしていたと驚きの告白をする。“彼”は地球を作り直そうとしようとしているのだと。
一方、008こと考古学者のピュンマ(声:杉山紀彰)と、MI6で活動する007ことグレート(声:吉野裕行)は、“天使”のような遺跡や“天使”のような不思議な少女と出会う。
原作を知っている人ならば想像がつくが、『009 RE:CYBORG』には、原作の「天使編」と「神々との闘い編」の影響が見られる。“神”とは、“人間”とは、“悪”とは“正義”とは? 深淵なテーマに挑んだ石ノ森のこの2編は、完結を迎えないままにストップした。つまり、「天使編」「神々との闘い編」こそが、「サイボーグ009」を未完の大作と呼ばせる所以(ゆえん)のエピソードなのである。そして、神山健治監督(『攻殻機動隊 S.A.C.』『東のエデン』)は、果敢にも『009 RE:CYBORG』で、その2編のテーマに正面から挑んだ。
あまりに壮大すぎるテーマゆえ、途中から宗教めいた展開になっているが、本テーマを扱うならば、ある程度は仕方がないと言わざるをえない。ただ正直、本作で観客の目を心を引くのは、物語ではなく映像だ。セルアニメの雰囲気を残したままに3DCG化された本作。スローモーションが可能になったことから生まれたジョーの能力・加速装置の描写を筆頭に、これまでにない感覚を受けるのは必至である。
だが如何(いかん)せん戦士たちの“サイボーグ”としての哀しみが伝わってこないのが辛い。未完のテーマも重要だが、哀しみこそがジョーたちの肝(きも)のはず。今回、大活躍する002ことジェット(声:小野大輔)にいたっては、もはやサイボーグではなくアンドロイド化してしまっている。現代的な風貌に生まれ変わった戦士たちだが、特に002と007、そして004ことハインリヒ(声:大川透)の変わりようはファンには寂しいものがあった。
その分といっては何だが、川井憲次の音楽と声優陣たちの仕事は一切の文句ナシ。期待度が高いだけにあれこれ言いたくもなるが、3DCGによる映像と、音楽、声優たちが与える息吹、そして挑んだテーマと、『009 RE:CYBORG』が、それぞれに観るべき理由たりえる魅力を抱えた意欲作であることは間違いない。(文:望月ふみ/ライター)
『009 RE:CYBORG』は10月27日より新宿バルト9ほかにて全国公開される。
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