『サンゴレンジャー』って……。との名前もさることながら、石垣島を訪れた正義感溢れる環境省の自然保護官が、開発を巡って揺れる島で、サンゴ礁を守るために立ち上がる環境保護映画。などと聞くと、正直、あまり見たい気にはなれない。だが、これが、おもしろいんである!
・青柳翔らが『サンゴレンジャー』舞台挨拶「雨待ちの度にキャストは仲良くなった!」
日常的に“エコ”といった言葉が溢れる今。企画が立ち上がった当初と、現在とでは、私たちの自然への意識にかなりの違いがある。それを認識していた中前監督は、環境保護のテーマだけを訴えることから大きく舵を切る。声を出して笑ってしまうシーンもたびたび登場する、青春エンターテインメントにしたのだ。
これが成功。観客は大いに笑い、またちょっとの感動を覚えつつ、自然の美しさを心に焼き付けていく。さらに、この作戦を成功に導いたのがキャスティングだ。東京からやってくる熱血サンゴレンジャー・矢島に劇団EXILEの青柳翔を起用したのだ。
184センチの長身でイケメンの青柳。2009年にデビューしてからは、破竹の勢いでキャリアを積んでいる。その青柳が青春モノで熱血自然保護官というと、これもイメージが固まってしまいそうだが、いやはや、これが想像とはかけ離れたキャラクターなのだ。
そもそも彼が演じる矢島は、熱血漢というより、破天荒な問題児。いや、もちろんサンゴ礁のことを何より大切に考えてはいるものの、その行動はハチャメチャでかなり天然も入っている。しかもその“破天荒”ぶりを、語り部であり、矢島と相棒を組む田中圭扮する岸谷らが、矢島の登場前に匂わすのである。プンプンと。
こんなに観客の期待をあおって大丈夫なのかと勝手に心配してみたものの、蓋を開ければ、青柳は期待以上の振りキレっぷり。髪の毛をクルクルパーマにして、島中の人々に影響を与えていく矢島を全身で表現してみせた。
これまでの青柳といえば、そのルックスを活かし、不良や二枚目、また主演をつとめた映画『渾身 KON-SHIN』の誠実な青年といった印象が強かった。それが本作では笑える強烈個性キャラをこれでもか!と見せてくれる。今までの役柄が吹き飛ぶくらいインパクト大である。
さて、レンジャーものというからには、ココ日本においては5人組のヒーローでなければならない。本作でも矢島に巻き込まれた岸谷をはじめ、絵に描いたようなヒロインのリサ(佐々木希)、ダイビングショップを経営する木崎(池田鉄洋)と、あとひとりのメンバーが最終的に加わる。このレンジャーの衣装も矢島印らしくてイイ。
ここまできて、まだ青柳翔が振り切れる姿が想像できないという方。ぜひとも序盤でのヒロインとの出会いの場面を楽しみにしてほしい。マジ!? ここまでやっちゃう!? とのくだりに笑いながら拍手し、ガッチリ心を掴まれてしまうはずだ。(文:望月ふみ/ライター)
『サンゴレンジャー』は6月15日より全国公開中。
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