収益化難しいアート系に投資、アカデミー賞で成果実るか
【興行トレンド】第94回アカデミー賞授賞式の開催が3月27日(日本時間28日)に迫った。最多11部門12ノミネートとなったのが『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。1920年代のアメリカを舞台に、冷酷な牧場主と彼を取り巻く人々の張りつめた人間模様を描く。主演男優賞にベネディクト・カンバーバッチ、助演女優賞にキルステン・ダンスト、助演男優賞にジェシー・プレモンスとコディ・スミット=マクフィーがノミネート。俳優部門で唯一4人が候補になった。またジェーン・カンピオンが監督賞候補となり、女性監督として初めて2度目のノミネートを果たした。作品賞の本命と目されている。
製作したのはネットフリックス。ネットフリックス作品は、19年『ROMA/ローマ』が初めて作品賞候補となって旋風を巻き起こし、20年は『アイリッシュマン』『マリッジ・ストーリー』、21年は『Mank/マンク』『シカゴ7裁判』が作品賞にノミネートされた。今年は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』に加え『ドント・ルック・アップ』も作品賞候補となった。
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が引っ張るアカデミー賞レースに割って入ってきたのが『コーダ あいのうた』だ。こちらはアップル作品(日本ではギャガ配給だが、アップルが日本以外の世界配給権を獲得。多くの国では「アップルTV+」で配信されている)。両親と兄は耳が聞こえず、手話を使って家族と周囲のコミュニケーション役を担う健聴者の主人公。歌の才能を認められ、成長していく感動作だ。『コーダ』は全米俳優組合賞でアンサンブル演技賞を受賞した。アカデミー会員における俳優の割合が高いため、アカデミー賞を占う上で重要な賞の1つと位置づけられている。最近では本賞を受賞してアカデミー賞作品賞を獲得した作品に『スポットライト 世紀のスクープ』(15年)、『パラサイト 半地下の家族』(19年)がある。
近年、メジャースタジオはビジネスになりづらい作家性の強い作品の製作を減らしている。メジャーの穴を埋めるように、動画配信サービスがこれらの製作を増やしたり、買い付けたりしている。動画配信サービスの『パワー・オブ・ザ・ドッグ』『ドント・ルック・アップ』『コーダ』のいずれかが作品賞に輝けば、アカデミー賞の転機となる。(文:相良智弘/フリーライター)
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