『ローン・レンジャー』
ジョニー・デップの盟友というと、まずはティム・バートンの名前が挙がるのは当然だが、相性の良さも忘れてはならないという存在はもう1人いる。『ローン・レンジャー』のゴア・ヴァービンスキー監督だ。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの3作、そしてアニメの西部劇『ランゴ』で組んできたジョニーとヴァービンスキーが、アーミー・ハマーという新世代の二枚目スターを迎え入れて、20世紀アメリカで人気を博した西部劇のコンビを復活させた。
ジョニーが演じるのはコマンチ族出身の悪霊ハンター、トント。ひび割れた白塗りに黒の縞状のメイク、頭の上にはカラスの剥製、と奇抜な装いは当たり役のジャック・スパロウ(『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズ)を彷彿とさせる。さらに台詞を極力少なくして、言葉よりも動きで見せるアプローチはサイレント映画時代の俳優、特にアクション演技に秀でたバスター・キートンを思わせる。ちょうど20年前に公開された『妹の恋人』でもキートンやチャーリー・チャップリンを模した動きをして見せたジョニーだが、あの頃の必死さとは正反対に、易々とスラップスティック風のコメディ演技を披露。役者として歩んだ日々と成長を改めて感じさせられる。
トントを相棒に “ローン・レンジャー”として巨悪と戦う郡検事のジョンを演じるアーミーは、何と言っても190センチ超えの長身に端整な顔立ちが目を引く。でも、出世作となった『ソーシャル・ネットワーク』や『白雪姫と鏡の女王』など、完璧なようで何かちょっと抜けている青年役がとてもよく似合い、今回の正義感あふれるジョンもぴったり。青臭い正義を振りかざしていたのが、トントと出会って行動を共にするうちに、ヒーローになっていく成長物語としても見ることができる。
2時間半の上映時間のなかには、アメリカにおける白人と先住民族が抱え続けた問題、なぜ善人(ジョン)がマスクで顔を覆わなければならないのか、という比較的重いテーマも盛り込み、大人が子どもに伝えるという行為の大切さを示す。主人公たちと悪党の追跡劇は「ウィリアム・テル序曲」をバックに、スリルとスピード全開のエンターテインメントで、21世紀の映像技術で描く西部劇だ。
プロデューサーは『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズを手がけるジェリー・ブラッカイマー。夏休み映画なのに、かなり容赦なく血なまぐさい描写が出てくるのもOK、という度量はさすが。自己規制せず、とりあえず攻める。ハリウッドの大物中の大物であっても守りに入らない貪欲さが、面白い映画を作るのだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ローン・レンジャー』は丸の内ピカデリーほかにて公開中。
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