レオン・ライとチャン・ツィイーが華やかな競演を繰り広げる『花の生涯〜梅蘭芳〜』。京劇の芸術性を高め、世界に知らしめた名優・梅蘭芳(メイ・ランファン)の半生を描いた、格調高い感動作だ。この作品を手がけたチェン・カイコー監督と、主人公・梅蘭芳の青年時代を演じた中国の新星ユィ・シャオチュンが、映画について、そして中国映画の今後について語ってくれた。
──まずは監督にうかがいます。梅蘭芳は女形の名優ですが、ユィ・シャオチュンさんは元々、女形俳優なのではないかと思えるような見事な演技を見せてくれました。どうやってキャスティングしたのでしょうか?
チェン・カイコー(以下、カイコー):(梅蘭芳の妻役で出演している)僕の妻チェン・ホンが上海の近くの町に行った時に彼を見かけ、推薦してくれたのです。この役は伝統芸能の基礎が必要な役なので、公開オーディションで選ぶというわけにもいきませんでしたが、彼は14歳の頃から中国伝統演劇のひとつである漢劇を学んできています。だから彼には基礎があるし、ルックスも合っていた。偶然に出会えた良き縁ですよね。
──ユィ・シャオチュンさんにうかがいます。女形は初挑戦とのことですが、役作りは大変でしたか?
ユィ・シャオチュン:撮影前に7カ月間トレーニングを受けました。それ自体は大変ではありませんでしたが、周囲には知人も友人もいない状況だったので、とても孤独でした。監督にいろいろ相談したいこともあったのですが、お忙しくて……。ただ、これは後で知ったのですが、監督は、わざと僕に会わなかったそうなのです。梅蘭芳と同じように孤独な状況を体験させたかったという思惑があったわけです。
──監督の奥様でもある女優のチェン・ホンさんが、本作で梅蘭芳の妻という重要な役を演じていますが、夫婦だからやりにくいということはありませんか?
カイコー:それはありませんが、本作に関して、妻はかなりの犠牲と努力を要したと思っています。なぜなら、今回は同時録音で撮影していたので、妻は完璧な北京語を話す必要がありました。けれど彼女は北京の出身ではないので、大変だったようです。人間って、どんなに訓練を積んでも、出身地のイントネーションが出てきてしまうものですから。でも、僕の要求が高いので、妻は大変だったと思います。
──かつての中国映画はとても真面目なものが多かったのですが、最近はエンターテインメントの度合いが高まっています。また、大きく発展していますが、そんな中国映画の現状と未来をどう感じているか教えてください。
カイコー:確かに、10数年前の中国映画は、社会情勢を反映させたような作品が大半を占めていました。丁寧に作られていはいましたが、シリアスで、襟を正して見ないといけないような部分もありました。最近の大きな変化は、時代が変えてくれたのだと思っているのですが、娯楽と芸術の融合という“映画の特性”を生かしたものに近づいたと思います。『花の生涯〜』は、芸術映画であるにもかかわらず、すでに1億4千万中国人民元(約20億円/09年3月7日現在)もの興行収入を得ていて(2009年1月現在)、更に増えていると聞いています。中国映画はこれからも発展する可能性を秘めています。内容については、私自身は楽観視していますが、問題もあります。それは、シリアスな部分が失われ、100%娯楽作になってしまってもいいのか、ということです。多少は、思想や社会的な部分も残さなければならないと考える人もいると思います。
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