【今日は何の日】『独裁者』の今に通じるメッセージとは? タイムレスな名作を残したチャップリンの日
4月16日は喜劇王チャップリンの誕生日であり、「チャップリンデー」だ。サイレントからトーキーへの変遷という時代の波にもものともせず名作を生み出し続けた偉業に敬意を表し、2作品をご紹介する。喜劇王という肩書を持つチャップリンだが、今回取り上げたのはどちらもシリアスな作品だ。
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ヒトラーを揶揄したことで話題となった『独裁者』
まずご紹介するのは『独裁者』だ。チャップリンは、明らかにヒトラーがモデルとわかる独裁者ヒンケルとユダヤ人の床屋チャーリーの二役を演じている。ヒンケルは架空の国家トメニアの独裁者であるが、脇を固める高官たちも実際のナチ高官がモデルになっているのは一目瞭然。太鼓腹の国家元師ゲーリングや意地悪そうな風貌の宣伝相ゲッペルスを彷彿とさせる人物が登場する。政策としてユダヤ人撲滅を掲げ、ユダヤ人街で突撃隊員がユダヤ人に傍若無尽な振る舞いをする点も史実と同じだ。
やはり見どころは最後の演説シーン。運命のいたずらで独裁者ヒンケルと入れ替わり、一介の市民である床屋のチャーリーが制圧したオスタリッチ国民や軍人ら大観衆の前で演説することになる。そこでチャーリーが切々と語る平和に対する想いは、そのままチャップリンの願いであることは言うまでもない。時、おりしもロシアのウクライナ侵攻で世界中の人々が「何故?」というやるせなさと怒りを覚える中、この作品の持つ尊いメッセージがより現実味を帯びる。
老いた道化と若きバレリーナの交流を描く『ライムライト』
この作品でチャップリンが演じるのは、かつて一世を風靡したが今は落ち目になった道化師カルヴェッロである。ある日彼は、自殺を図った同じアパートに住む若きバレリーナ、テリーを助ける。ここから二人の交流が始まるのである。テリーは「足が動かないからもう踊れない」と将来を悲観して自ら命を絶とうとしたのだが、足が動かない原因は彼女の心にあった。そんな彼女を温かく励まし復帰への道をサポートする「とっても親切なやさしいおじさん」への感謝の念が、徐々に違った性質の気持ちへと変化していく。
果たして親子ほど年の離れた二人の関係はどうなるのか。未来ある有望なバレエダンサーと、時代遅れの芸で全く笑いを取れなくなった老いた道化師。同じ舞台人でありながら対照的な立ち位置にいる二人の姿が、「栄光は永遠には続かない」というこの世の切ない条理を浮き彫りにする。
今回はチャップリンが監督・主演を務めた作品を紹介したが、興味がある方はぜひ彼自身にスポットを当てた伝記映画『チャーリー』も見ていただきたい。(T)
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