第86回アカデミー賞授賞式が2日(現地時間)、ロサンゼルスのドルビー・シアターで行われ、『それでも夜は明ける』が作品賞、脚色賞、助演女優賞の3部門を受賞、独創的な技術を駆使した映像を評価され、最多10部門にノミネートされたアルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』が監督賞や技術部門など最多7部門で受賞した。
・オスカー候補ジョナ・ヒル、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ギャラは組合最少額
『それでも夜は明ける』は19世紀のアメリカ東部で自由黒人として暮らしていたソロモン・ノーサップが拉致され、南部で奴隷として過ごした12年間を彼自身が綴った自伝をもとに映画化した作品。製作、出演したブラッド・ピットにとって初めてのオスカー受賞となった。また黒人監督作品が受賞するのはアカデミー賞史上初で、スティーヴ・マックイーン監督は「誰にでも、ただ生き残るだけではなく、生きる権利があるのです」と劇中のソロモンの台詞にかけてスピーチ、終わるやいなや、壇上にそろったキャストやスタッフたちの方へ向き直り、ジャンプしながら喜びを爆発させていた。
『それでも夜は明ける』は前日発表のインディペンデント・スピリット賞でも作品賞および監督賞に輝いたが、監督賞についてはアカデミー賞ではハリウッド・メジャーの『ゼロ・グラビティ』に軍配が上がった。同作と並んで10部門で候補になっていた『アメリカン・ハッスル』、6部門ノミ、ネートの『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』、5部門ノミネートの『ウルフ・オブ・ウォールストリート』はいずれも残念ながら無冠に終わった。日本からノミネートされた短編アニメ賞候補『九十九』、長編アニメ賞候補『風立ちぬ』も惜しくも受賞はならず。
注目の俳優部門の受賞者は、『ダラス・バイヤーズクラブ』のマシュー・マコノヒーが主演男優賞、同作のジャレッド・レトが助演男優賞、『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェットが主演女優賞、『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴが助演女優賞、と前哨戦でも連勝していた本命候補がそろった。
今年の授賞式は昨年と比べるとアットホームな雰囲気。3部門で受賞した『ダラス・バイヤーズクラブ』関係者と『ウルフ・オブ・ウォールストリート』関係者は席が近く、助演男優賞を受賞したジャレッド・レトが登壇する際は同部門の候補だったジョナ・ヒルと握手、マシュー・マコノヒーが主演男優賞を受賞した際はレオナルド・ディカプリオとハグするなど、ライバルを称え合う姿が印象的だった。
そんな雰囲気作りに大きな役割を果たしたのが司会のエレン・デジェネレス。ステージを降りて客席を歩き回りながら、出席者をいじったり、要所要所で携帯電話で自撮りをしながらツイッターにアップ。『8月の家族たち』で史上最多18度目の候補となったメリル・ストリープを囲んでの記念撮影には、同作で助演女優賞候補だったジュリア・ロバーツをはじめ、近くの席にいたブラッド・ピット&アンジェリーナ・ジョリー、ケヴィン・スペイシー、助演賞受賞のジャレッド・レトとルピタ・ニョンゴ、チャニング・テイタムにジェニファー・ローレンスらそうそうたる顔ぶれが勢ぞろいし、さらには「僕が撮るよ」とブラッドリー・クーパーがエレンの隣りで自撮りした。
画像はすぐにエレンのアカウントに「ブラッドリーの腕がもう少し長ければ。これまでで最高の写真」というコメントとともにアップされ、授賞式が終わるまでに200万件以上のリツイートを記録した。このため、ツイッターが一時的につながりにくくなる状態が発生、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーの公式アカウントが「ごめん。私たちのせいです(Sorry, our bad.)」とツイートしていた。
また、「ピザを食べない?」と宅配ピザを注文し、会場近くのピザ店から配達人が登場。エレン自らマーティン・スコセッシ監督やジュリア・ロバーツ、メリル・ストリープらにピザを配り、ピザ代も徴収。大物プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインに「プレッシャーなし。数億人が見てるだけだから、ちょうどいいと思った金額をよろしく」とチップを払うように促し、会場の笑いを誘った。
奴隷にされた人々(『それでも夜は明ける』)やAIDSを打ち負かそうと奮闘する男(『ダラス・バイヤーズクラブ』)。自由を求めて戦う人間を描く社会派の作品と、技術を駆使したハリウッド・エンターテインメント(『ゼロ・グラビティ』)が共存する、現代映画事情がうかがえる結果といえそうだ。
主な受賞結果は以下の通り。
●作品賞:『それでも夜は明ける』
●監督賞:アルフォンソ・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』)
●主演男優賞:マシュー・マコノヒー(『ダラス・バイヤーズクラブ』)
●主演女優賞:ケイト・ブランシェット(『ブルージャスミン』)
●助演男優賞:ジャレッド・レト(『ダラス・バイヤーズクラブ』)
●助演女優賞:ルピタ・ニョンゴ(『それでも夜は明ける』)
●長編アニメーション賞:『アナと雪の女王』
●外国語映画賞:『追憶のローマ』(イタリア)
●脚本賞:『her/世界でひとつの彼女』
●脚色賞:『それでも夜は明ける』
●美術賞:『華麗なるギャツビー』
●撮影賞:『ゼロ・グラビティ』
●ドキュメンタリー賞:『バックコーラスの歌姫たち』
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