戦禍のウクライナを鮮烈に描き出す俊英ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ
ウクライナ映画界の俊英として世界中の期待を集めるヴァレンチン・ヴァシャノヴィチが監督・脚本・撮影・編集・製作を手がけた『アトランティス』(19年)『リフレクション』(21年)の2作品が、6月25日より全国順次公開される。これに先立ち予告編が公開された。
・ウクライナ侵略戦争を描いた、今こそ見るべき作品が緊急公開!
監督のヴァレンチン・ヴァシャノヴィチは、ウクライナ映画史上屈指の傑作との評価を得た『ザ・トライブ』(14年)に製作・撮影・撮影で参加するなど、ウクライナを代表する映画人として高く評価されている。
『アトランティス』は19年ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門作品賞、19年東京国際映画祭審査委員特別賞をそれぞれ受賞し、20年の米アカデミー賞長編国際映画賞ウクライナ代表に選ばれた。『リフレクション』は21年ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門に選出されている。いずれも世界的な注目を集め、高く評価されながら、これまで日本では劇場公開されなかった。
今年3月、この2作品の上映およびウクライナ映画人支援のための寄付を集めるクラウドファンディングが「ウクライナ映画人支援上映 有志の会」により行われ、目標額を上回る5,994,500円を集め、3月29~31日の3日間、東京・渋谷のユーロスペースとユーロライブにて上映された。上映後の満足度も高かったものの、限定上映ゆえに鑑賞を希望しながらも叶わなかったという声も多く、このたび満を持しての劇場公開となった。
予告編は2本立てとなっている。初めに紹介されるのは、戦争終結から1年後の2025年のウクライナ・ドンバス地域を舞台に、すべてを失い帰還した元兵士と戦死者の遺体を回収する女性の邂逅を描く『アトランティス』だ。どのショットにもフィクションとは思えないような生々しさが漂い、見るものを圧倒するが、最後を飾るサーモグラフィの映像にほのかな希望を感じさせる。
そして、戦争のはじまりの14年を舞台に、ドンバス地域で捕虜となった外科医の苛烈な運命を、1シーン1ショットの鮮烈な映像で綴る『リフレクション』は、『アトランティス』からさらに研ぎすまされたヴァシャノヴィチ監督独自の写実性と様式美が融合した映像世界が体験出来る。悪夢のような非人道的な残虐行為を受け地獄を見た外科医の「魂の回復」を、彼の娘である少女の視点を交えて描く本作。予告編のラストを飾る彼の笑顔に祈りを捧げずにはいられない。
『アトランティス』『リフレクション』は、6月25日より全国順次公開される。
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