イタリアといえば青い海、輝く太陽、ラテン系のノリで楽観的。そして「カンターレ(歌), マンジャーレ(食)、アモーレ(愛)」と、いかにもイタリアっぽい明るいイメージがあるシチリア島。と同時に移民と失業者が多く、映画『ゴッドファーザー』で描かれたところでもあります。『ゴッドファーザー』シリーズはマフィアの抗争を描いている映画でありながら、「家族の絆」と「コネ」という、いまでも人々に根付いているイタリアの真の姿を描いたものです。
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日本以上のコネ社会であるイタリアで、南はまだしも、北には「キウーゾ(閉じている)」と言われるように、閉鎖的な人、社会がはびこっています。相手が知り合いなら愛想のいい人も、知り合いでなければ、態度が一変します。
例えば交通事故が起こったとします。明らかに「加害者に責任がある」と目撃者が被害者の弁護をすると言っていたのに、三者で話しているうちに、目撃者と加害者が同郷である事がわかると、一転して加害者の弁護をするようになってしまう──なんて事は日常的な話。閉鎖的な国であればあるほど、味方が多い人にとっては有利になっていく社会なのです。
南部シチリアでは『ゴッドファーザー』シリーズで毒殺に使われる「カンノーロ」というお菓子が名産ですが、北部でも見かけることがよくあります。これももしかしたらマフィアが絡んでいるのではないかと勘ぐってしまうのですが、南の経済を支えていたとまでいわれるマフィアも、近年では北に進出しています。ミラノの映画祭ではマフィアのドキュメンタリー映画が上映され、そのなかでは街の中心でもマフィアの取引が白昼の下に行なわれる様子が描かれています。
一方で、イタリア警察もマフィア撲滅に本腰を入れていて、ここ数年、大ボス逮捕のニュースがよく流れています。『ゴッドファーザー』のモデルとなった「コーザ・ノストラ」も、いまでは幹部の逮捕が続き、衰退が激しいと言われ、近年では一般市民もマフィアとの関わりを拒絶・否定する動きもあるようです。
日本で警察と暴力団の共存関係がささやかれつつも日常的には話題に登らないように、イタリアでもその存在を認めつつも、政治介入しているはずのマフィアの話をすることはほとんどありません。そんななか、シチリアでは反マフィアの知事が誕生しています。また反マフィアを題材にした『ペッピーノの百歩』(00年)というシチリア映画もあります。これは闇に葬り去られた未解決事件を描いた『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』などで知られる社会派監督マルコ・トゥリオ・ジョルダーナの作品です。
雇用問題にも多くの暗部を抱えるイタリアですが、縁故採用などというのも当たり前のようにまかり通ります。大企業より個人経営の店や中小のところが多いですから、身内同士で助け合うような形で、自然と仕事をしていく形であったりします。知り合いが失業すれば、余剰でも雇うような体制があります。ですから失業したはずなのに必死に働くこともなかったりします。これがイタリアが経済的に伸びない理由のひとつでもあります。
北と比べて失業者の多さが突出しているシチリアで、労働組合と利害関係を持っているマフィアが南部の仕事を調整しているわけで、市民はそこに恩義を感じ、表立って撲滅を叫べないのも事実。政界でも利権のために法よりも義理を重んじて闇で動いてくれるマフィアが、黒幕として奔走してます。それでも、政治家はもちろん一般市民的にしても、公然とはマフィアの存在を肯定できるわけではないようです。(文・写真:池田剛/イタリア滞在歴11年、映画製作者)
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