音楽から見る宮崎駿作品の魅力・前編/久石譲が“ジブリらしさ”の確立に大きく貢献

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『スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX』
徳間ジャパンコミュニケーションズ
『スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX』
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長編10作のエンディングテーマから見えてくる
「タイアップ曲は使わず知名度は度外視」のスタンス

6月18日の『風立ちぬ』Blu-ray/DVD、7月2日の『宮崎駿監督作品集』Blu-ray/DVDボックスに続き、7月16日に『スタジオジブリ 宮崎駿&久石譲 サントラBOX』というCDボックスセットが発売される。同日、7月19日公開の新作『思い出のマーニー』(監督:米林宏昌)のサントラも発売されるということで、ジブリファンにとっては泣き笑いのリリースラッシュが続く。

『風立ちぬ』に感じる、宮崎駿監督の業の深さ
 
この『サントラBOX』は、監督:宮崎駿/音楽:久石譲のコンビで作られた長編作品のサウンドトラックを収めたボックス・セット。『ルパン三世 カリオストロの城』の音楽は大野雄二が担当しているのでここには含まれず、『風の谷のナウシカ』から『風立ちぬ』までの10作。これに『天空の城ラピュタ』のUSAヴァージョン、三鷹の森ジブリ美術館公開作品『パン種とタマゴ姫』にインスパイアされた『ラ・フォリア』、『魔女の宅急便』を題材にしたミニドラマ『元気になれそう』を加えた全13作のサントラが収められている。

この長編10作にはさまざまな楽曲が印象的に使われ、いまやクラシックとして愛聴されている曲もけっこうあるが、宮崎作品で特に記憶に残るのは、やはりエンディングテーマだ。10作のエンディングテーマを並べると以下のようになる。

■風の谷のナウシカ 「鳥の人」作曲:久石譲(インストゥルメンタル)
■天空の城ラピュタ 「君をのせて」作詞:宮崎駿/作曲:久石譲/歌:井上あずみ
■となりのトトロ 「となりのトトロ」作詞:宮崎駿/作曲:久石譲/歌:井上あずみ
■魔女の宅急便 「やさしさに包まれたなら」作詞・作曲・歌:荒井由実
■紅の豚 「時には昔の話を」作詞・作曲・歌:加藤登紀子
■もののけ姫 「もののけ姫」作詞:宮崎駿/作曲:久石譲/歌:米良美一
■千と千尋の神隠し 「いつも何度でも」作詞:覚和歌子/作曲・歌:木村弓
■ハウルの動く城 「世界の約束」作詞:谷川俊太郎/作曲:木村弓/歌:倍賞千恵子
■崖の上のポニョ 「崖の上のポニョ」作詞:近藤勝也(補作詞:宮崎駿)/作曲:久石譲/歌:藤岡藤巻と大橋のぞみ
■風立ちぬ 「ひこうき雲」作詞・作曲・歌:荒井由実

ヴォーカル曲/インストゥルメンタルを問わず、宮崎作品は基本的に久石譲の書き下ろし楽曲で占められているが、エンディングテーマについては楽曲的にも人選的にもバラエティに富んでいる。久石本人が作曲しているのは『ナウシカ』の「鳥の人」(インストゥルメンタルなのでヴォーカルは入っていない)、『ラピュタ』の「君をのせて」、『となりのトトロ』『もののけ姫』『崖の上のポニョ』それぞれの同名曲という5曲。『魔女宅』『風立ちぬ』の2作品で起用された荒井由実はいずれも既発曲で、『紅の豚』の加藤登紀子「時には昔の話を」も既発曲の再録音。また、『千と千尋』で作曲と歌を担当した木村弓は、次作『ハウル』でも作曲者として楽曲を提供している。こうして見てみると、基本的にタイアップ曲を使わず、作品とマッチすれば細かいことにはこだわらない──知名度は度外視、既発曲でもハマればOK、合う人は繰り返し使う、という寛容なスタンスが浮かび上がってくる。…後編に続く(文:伊藤隆剛/ライター)

音楽から見る宮崎駿作品の魅力・後編

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