『トランスフォーマー/ロストエイジ』
クルマが突然二足歩行の巨大な金属生命体にトランスフォーム(変身)し、言葉を喋り、大迫力の戦闘を繰り広げる。日本発のロボット玩具に着想を得たシリーズ第4作『トランスフォーマー/ロストエイジ』はマイケル・ベイ監督が続投だが、前作から4年後の設定でキャストを一新、シリーズの軸となる正義の軍団オートボットと悪の組織ディセプティコンの闘いに参戦するのは、父と娘とその彼氏だ。
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妻を亡くし、テキサスで高校生の娘と暮らす廃品業者にして発明家のケイドが入手した中古トラックが善のトランスフォーマーのリーダー、オプティマスだったところから物語は始まる。全滅したはずのディセプティコンの生き残りの襲来、政府の科学者が開発した軍事用人工トランスフォーマー、恐竜型トランスフォーマーのダイナボットまで加わる物語は、北京や香港まで舞台となり、とにかく何もかもスケールが大きい。
鮮やかな色彩と、まさにトランスフォームとしか形容のしようがないスムーズな金属体の変貌は見事のひと言に尽きる。敵と味方に分かれる複雑な事情もあるようだが、その辺りがさっぱり頭に入って来なかったとしても、目の前で起きている闘いでどちらが善か悪かははっきりわかるし、それさえ理解できれば大迫力の映像を追うだけで十分楽しめる。
これだけ突飛で派手な嘘(フィクション)を成立させるのに重要なのは、生身の俳優が演じるドラマ部分だが、その点でも本作はぬかりない。主人公・ケイドを演じるのはマーク・ウォルバーグ。何と言っても『テッド』でクマのぬいぐるみと大格闘シーンをやってのけた実績があり、巨大な金属の塊を相手にしても1ミリもブレない。アクション・スターでもある彼は体を張ったアクションもOK。家族想いの役も得意で、オスカー候補になった『ザ・ファイター』、最愛の娘を殺された父親を演じた『ラブリーボーン』なども記憶に新しい。『ラブリーボーン』で同じくオスカー候補になったスタンリー・トゥッチが人工トランスフォーマー開発の第一人者の科学者を演じ、ウォルバーグと再び共演しているのも映画好きにはちょっとうれしい偶然だ。
それにしても例外なく、どのシーンも莫大な金額がかかっているのが見てとれる。それをカバーするために投入されたのが、中国資本だ。人気女優のリー・ビンビンをキャスティングし、後半は香港が舞台になり、というわけで中国では7月末時点で興行収入3億ドルを突破した。といっても、中国企業に限った話ではなく、本作ではテレビでスポーツ中継を見ているかのように、画面のあちこちにいろいろな企業や商品のロゴ見える。ときどき、芝居の流れを止めてでも、何かを飲んだりする。映画を作る資金を募るためのスポンサーなのか、スポンサーが売り出したい商品を画面に映すための映画なのか、本末転倒。というか、どちらでもある。何も考えずに大爆発とアクションの連続を楽しむ娯楽作であり、今の映画作りの事情をぶっちゃけて見せる。そんな風に開き直ったような姿勢がいかにもマイケル・ベイらしい。(文:冨永由紀/映画ライター)
『トランスフォーマー/ロストエイジ』は8月8日より公開中。
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