映画界で注目を集める「ライブ・ビューイング」と「デジタル配信」
「ライブ・ビューイング」とは、シネコンでスポーツや音楽ライブ、声優のイベントなどを生中継で楽しむこと。映画『アバター』の大ヒットで3D元年となった2010年ごろから劇場のデジタル化が加速。その結果、音楽ライブなど映画以外のコンテンツを映画館に生中継できるシステムが整い、ライブ・ビューイングの市場が拡大した。
当初は映画興行の落ち込みや、空席が目立つ平日の観客動員に対する補てん的なサービスとして捉えられていたが、今や一大ビジネスとして確立。ライブ・ビューイング(生中継のみ、収録作品の上映を除く)の13年の年間売り上げは33億円で、上映本数は130本、前年比62%増。同様の伸び率で試算すると、14年は50億円を超える規模に成長する。
好調の要因には、チケットが完売したライブを見られる、近くのシネコンで楽しめるアクセスの良さや料金の安さ、といった鑑賞の手軽さが挙げられる。また、ライブ・ビューイングを楽しむコアなファン層はグッズやブルーレイ・DVDといった関連商品の購入に積極的で、最近は劇場限定グッズも登場し人気を博している。シネコンにとっては、映画料金よりも高いライブ・ビューイングのチケット収入や、グッズ販売収入が見込めるメリットがある。
ライブ・ビューイングを企画・製作・配給する会社として注目されているのがライブ・ビューイング・ジャパンだ。大手芸能事務所のアミューズがファミリーマートなどと11年に設立。自社でコンサート制作を手掛けてきたことから「いいライブ映像を作ってくれる」とアーティスト側の信頼感があり、年々増加。例えば11月ではAKB48やももクロと、アミューズ所属以外のアーティストのライブ・ビューイングを実施した。
一方「デジタル配信」とは映画をデジタルデータ化して配信すること。洋画メジャーでは、新作のブルーレイ(BD)&DVD発売に合わせてデジタル配信を行うケースが増加。デジタル配信ならテレビの他、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などでいつでも好きな時に見られ、視聴者の楽しみ方を広げている。デジタル配信には「レンタル」と「セル(購入)」の2種類あり、作品によってはBD&DVD発売に先行して始まる。
例えば『トランスフォーマー/ロスト・エイジ』は11月12日にデジタル・セルとレンタルが先行配信され、BD&DVDが12月10日に発売。『イントゥ・ザ・ストーム』は12月10日にデジタル・セルが先行配信され、23日にBD&DVDが発売される。
デジタル配信の利用率はBD&DVDのレンタル・販売に比べて数%とまだ低い。洋画メジャーでは、配信ビジネスが順調に伸びているアメリカを倣い、日本でも配信事業を加速させたい狙いがある。だが、レンタルビデオ事業が衰退傾向のアメリカと、堅調な日本では事情が異なっている。各社ではパッケージビジネスへの影響を慎重に見極めながら、配信のタイミングを模索している。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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