しんどくて、でも、幸せを追う彼らを見守りたい。絵津鼓が描く世界を俳優たちが真摯に好演
繊細な青春群像劇『モアザンワーズ/More Than Words』
愛し合う男性同士とそれを見守るひとりの女性の日々を綴った『モアザンワーズ/More Than Words』がprime videoで配信中だ。漫画家・絵津鼓による漫画『モアザンワーズ』と、その後日譚であるBLコミック『IN THE APARTMENT』という二つの原作を併せて実写ドラマ化している。
・愛し合う男たちを演じた2人が語る撮影秘話と作品への思い『モアザンワーズ/More Than Words』青木柚×中川大輔インタビュー
同じ高校に通う親友同士の美枝子と槙雄は一緒に始めたバイト先で大学生・永慈と出会い、3人はつるむようになる。やがて、永慈が槙雄に好意を寄せて2人は結ばれることになるが、周囲が交際に反対し、彼らを引き裂こうとする。そして、なんと、美枝子は2人のために彼らの子どもを産むことを決意。3人の特別な関係は徐々に変化していくなか、槙雄は幼なじみの朝人と偶然再会する。
注目の若手俳優が集結し、美枝子役は藤野涼子、槙雄役は青木柚、永慈役は中川大輔、そして朝人役をお笑いコンビ「EXIT」の兼近大樹が扮し、繊細な青春群像劇が繰り広げられる。
槙雄の過去に衝撃、実写だからこそリアリティを持って迫ってくる
ドラマが時系列に沿って語られて行くのは、受け手に取って親切仕様だと感じた。BL好きな筆者は先に発表されていた『IN THE APARTMENT』を大きな覚悟もなしに読んで、後半で明かされる槙雄の過去に打ちひしがれた思い出がある。しかも、絵津鼓のイラストはかわいらしく、槙雄はなかでもかわいいキャラクターで掴みどころなくてふわふわしているのだ。まさか、彼がそんな過去を背負っているとは思わずに読んだものだから、結構衝撃だった。絵津鼓の近作BLコミック『メロンの味』もふわふわしたキャラクターに重い過去があるので、それが絵津鼓の癖なのかもしれない。
ただ、キャストに取材した際にも話に出たが、絵津鼓のかわいい絵柄もあって、漫画の方が軽やかでやわらかな感触がある。あぁ、このキャラクターたちなりに一生懸命に生きているんだなぁ、と距離感を持って見ることができる。その点、やはり実写になると、隅々まで鮮明に見えて当然のことだが、リアリティを持って迫ってきて、しんどさは大きいかもしれない。
兼近のキャスティングに驚きも、明るいイメージに救われる
そこへきて前述した通り、ドラマは時系列に沿って展開するので、後半に登場する朝人の存在に救われる。朝人も自身の悩みを抱えつつ槙雄の背中を押して、槙雄は少しずつ前を向いて前進していき、ホッとさせられる。原作好きとしては兼近のキャスティングにはじめは驚いたことを否定できないが、実際にドラマを見ると兼近本人の明るいイメージはいい意味で効果があり、演技も役柄も浮かずに作品になじんでいる。
萌えを楽しむ類の作品ではなく、しんどい内容ではある本作。苦手な方に無理にはすすめないが、実力ある若手たちが真摯な好演をもって見せる青春群像は見る価値がある。模索しながら相手と自分の幸せを追おうとする彼らを見守って欲しい。
本ドラマにも癒しはあるが、もっとしんどさを和らげたいと言う方は、原作には『続・IN THE APARTMENT』なる続編があるので、そちらも読むことをおすすめする。さらにさらに、もっと癒されたい方は、朝人の同級生たちが描かれる絵津鼓原作のBL漫画『SUPER NATURAL』をぜひ。こちらは萌え補給にももってこいのかわいいラブストーリーだから、ホッとさせられるだろう。(文:牧島史佳/BLライター)
<作品概要>
Amazon Originalドラマ『モアザンワーズ/More Than Words』Prime Videoにて配信中
出演:藤野涼子、青木柚、中川大輔、兼近大樹(EXIT)
原作:絵津鼓「モアザンワーズ」(幻冬舎コミックス)、「IN THE APARTMENT」(大洋図書)
監督:橋爪駿輝
Amazon作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0B8QLHYPW
PICKUP
MOVIE
INTERVIEW
PRESENT
-
【舞台挨拶あり】齊藤工が企画・プロデュース『大きな家』公開直前舞台挨拶付試写会に15組30名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.22 -
『型破りな教室』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.29