『踊るアイラブユー♪』は、『レ・ミゼラブル』の音楽プロデューサーにして『フル・モンティ』でアカデミー賞作曲賞を獲得したアン・ダッドリーが音楽監督と作曲を担当するミュージカル映画。
海辺の美しい町を舞台に結婚式直前のドタバタを描いた作品のトーンは『マンマ・ミーア!』に通じるものがあり、ABBAの70年代のヒット曲を中心に劇中歌が構成されていたあの映画に呼応するかのように、本作では80年代のMTV全盛期を彩ったヒット曲が数多く使用されている。
マドンナ「ホリデイ」、バナナラマ「ヴィーナス」、ヒューイ・ルイス&ザ・ニュース「パワー・オブ・ラヴ」、シンディ・ローパー「ハイスクールはダンステリア」、ワム!「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」、バングルス「胸いっぱいの愛」、ロクセット「愛のぬくもり」、シェール「ターン・バック・タイム」といった楽曲たちが、底抜けに明るく痛快に突き進みながらも優しさや繊細さを忘れないストーリーをうまく補完。ヒロイン姉妹や登場人物それぞれの心情を見事に言い当てた歌の割り振りも見事で、単なる80年代懐メロのメドレーに終わっていないところにダッドリーの確かな手腕を感じることができる。
ヒロイン姉妹を演じるのは、ハンナ・アータートン(妹のテイラー役)とアナベル・スコーリー(姉のマディ役)。共に舞台を中心に活躍していることもあり、歌って踊れる女優として本作に抜擢されたようだが、歌については2人とも良い意味で肩の力が抜けていて、鍛え抜かれたノドで朗々と歌われるミュージカルとはひと味違うカジュアルさを醸し出している。テイラーの元カレで偶然にもマディの婚約者という役どころのラフを演じるのは、イタリア人俳優のジュリオ・ベルーチ。そのほか、シンガー・ソングライターのレオナ・ルイスやコメディエンヌのケイティ・ブランドらが脇を固め、作品に彩りを加えている。
本作では楽曲ごとに練り上げられたダンス・パフォーマンスも見どころのひとつ。振り付けを担当しているリッツア・ビックスラーは、以前このコラムで紹介した『カムバック!』を手がけた人だ。そこではニック・フロストにキレキレなサルサ・ダンスを指導していたが、この映画でも冒頭の空港から大団円の海辺まで、さまざまなロケーションで役者たちの個性を生かした妙技を見せてくれる。(後編へ続く)
・【映画を聴く】懐かしいだけじゃない!80年代ヒット曲の魅力を生かしたミュージカル映画『踊るアイラブユー♪』/後編
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