さまざまな道具と技を駆使してあらゆる生の音を作り出し、映画に命を吹き込む“音の魔術師”とは!?
#エドワード・ヤン#ドキュメンタリー#ホウ・シャオシェン#ワン・トン#ワン・ワンロー#台湾映画#擬音 A FOLEY ARTIST#映画
音響効果技師の記録であり、ひとりのスタッフの目を通して見た台湾映画史
台湾映画の音に関わる職人たちを描いたドキュメンタリー映画『擬音 A FOLEY ARTIST』より、世界的に活躍する日本人フォーリーアーティストほか映画を支える著名人からの応援コメント、ワン・ワンロー監督よりメッセージ動画を紹介する。
・母娘の感情の行き違いがせつない、母を受け入れられない少女は…
雑多なモノが溢れるスタジオで、映画の登場人物の動きやシーン、雰囲気を追いながら、想像もつかない道具と技を駆使してあらゆる生の音を作り出す職人、フォーリーアーティスト。本作は金馬奨に多数ノミネートされた台湾映画界の生きるレジェンド、フー・ディンイーの40年に及ぶフォーリー人生を記録したドキュメンタリーであり、ひとりのスタッフの目を通して見た台湾映画史である。
本作は、70本を超えるフーの担当作品への言及を中心に、ホウ・シャオシェン、ワン・トン、エドワード・ヤンら1980年代の台湾ニューシネマ、そしてそれ以前の台湾映画を垣間見ることができる貴重な映像記録だ。音響制作の老巨匠たち、台湾映画のサウンドトラックを制作する伝説的な人物たちも登場し、映画の音を取り巻く環境の変化やフォーリーの未来について語る。
監督を務めるワン・ワンローは、詩人のドキュメンタリー映画を制作中に、超現実的な詩の世界を現場音だけで表現するには限界があることを痛感。本格的に「音」を勉強しようと思ったことが、本作を制作するきっかけとなった。
映画には目に見えないプロフェッショナルがたくさん存在する。映画界のあらゆる技術的側面がデジタル化されつつあるなか、効果音だけは機械やファイルに置き換えられない。フォーリーは仕事ではなく創作であり、生活そのもの。フーは今もなお、日々新たな音に触れ続けている。
この度、さまざまなかたちで映画を支える著名人からコメントが到着した。コメント寄稿者には、俳優の田中麗奈、入山法子をはじめ、『クリード 炎の宿敵』(19年)『ブレードランナー2049』(17年)など大作のフォーリーを多数手がけた日本人フォーリーアーティストの小山吾郎、映画の裏方で活躍する職人たち、翻訳家らが名を連ねる。また、ワン・ワンロー監督からは日本公開を喜ぶメッセージが到着した。
■小山吾郎(フォーリーアーティスト)
テクテク、ガッシャン、ゴトンゴトン。小道具の山の中から飛び出す音たちはとにかく愉快! フォーリースタジオは音の宝箱だ。その蓋を、伝説の足音職人フー・ディンイー氏が開けて見せてくれる。台湾映画の複雑な歴史と、それを生きてきた巨匠たちのスゴい話が聞ける貴重なドキュメント。
■田中麗奈(俳優)
台湾映画を支えていたフォーリーアーティストの存在を初めて知った。
私たちが日常で普段使っているあんなものやこんなもの、たとえばゴミのようなものさえも、彼の手に掛かるとたちまち生き物となり音を出し始める!! 正に映画界の魔術師です。
■入山法子(女優)
自分の捨てきれない「好き」を、力の限りやり続ける。
もっと聞かせて! もっと教えて! と話しかけたくなる。
古さや新しさの壁を越えて、何を守り、何に情熱を捧げようか。
これから作っていきたい、理想の風景を想像しました。
■石坂健治(東京国際映画祭シニア・プログラマー/日本映画大学教授)
身の周りの品々で効果音を創作し画面に貼り付けるフォーリー・アーティストのファンタジックな音響哲学は、同時録音=リアリズムの時代の到来で転換を余儀なくされる。その画期を越えてなお至高の音を追求する寡黙な台湾映画人の姿から、知られざる東アジアの映画史が見えてくる。
■北田雅也(音響演出/フォーリーアーティスト)
『ようこそ映画音響の世界へ』が世界最大の映画帝国における音響ヒーローたちの「アベンジャーズ」だとすれば、この映画はアジアの小国のダンジョン(映画界)でフォーリーアーティストという職に辿り着き、技術を磨いて生き抜いた寡黙な男の静かな冒険の物語だ。
■樋口裕子(翻訳家)
フーさんの音作り人生を敬意を込めて描いた『擬音』には、台湾ニューシネマをはじめ映画の宝物が満載で感激の連続でした。侯孝賢監督と脚本家の朱天文さんが出会うきっかけを作った『少年』の1シーンもやっと見られました!
映画『擬音 A FOLEY ARTIST』は11月19日より全国順次公開。公開2週目となる11月26日にはワン監督が来日し、新宿K’s cinemaにて上映後トークイベントが開催される予定。
・『擬音 A FOLEY ARTIST』の場面写真はこちら!
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