ニコラ・ヴァニエ監督による2013年のフランス映画『ベル&セバスチャン』が、明日から日本でも公開される。原作はセシル・オーブリーの児童小説『アルプス村の犬と少年』で、本国フランスでは1965年から70年にかけてテレビドラマとして放映されているが、本格的な実写映画は今回が初めてとなる。
日本では80年代に『名犬ジョリィ』のタイトルでテレビアニメ化。フランスでも放映されるほどの人気を得ており、原作は知らないけどこのアニメは知っている、という人も多いだろう。ちなみに、以前このコラムでも紹介した映画『ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール』の監督、スチュワート・マードックが主宰している人気バンドの名前が本作のタイトルと同じ“ベル・アンド・セバスチャン”だが、これもオーブリーの小説の原題『Belle et Sébastien』に由来するものだという。
舞台は第二次世界大戦中、ナチスドイツの占領下にあったフランス。フレンチアルプスのふもとの村で暮らす孤児=セバスチャンと、村人から“野獣”と誤解され命を狙われるグレートピレニーズ犬=ベルの心の交流を描いた物語で、主人公のセバスチャンは2400人の候補から選ばれたという新人、フェリックス・ボシュエが演じている。また、オーブリーの実息でテレビドラマ版でセバスチャンを演じたメーディが、狩人のアンドレ役で出演していることも長年のファンには見逃せない。
ニコラ・ヴァニエは、作家であり探検家でもあるというユニークな経歴を持つ監督で、四半世紀に渡って世界のさまざまな辺境を旅して、その記録を小説や映像作品として発表している。少年時代にテレビドラマ版に接しており、映画化にあたっては根本的な世界観は踏襲しつつ、新たなエピソードも盛り込み、「テレビドラマのカリカチュアにならないよう注力した」という。
本作の音楽を担当するアルマン・アマールは、最近ではジュリエット・ビノシュ主演の『おやすみなさいを言いたくて』などを手がける作曲家。彼の手によるスコアがところどころで美しい映像に寄り添い、その哀愁漂うトーンで物語に深い陰影をもたらしている。
加えてエンディング・テーマの「Belle」をフランスの人気シンガー、ZAZ(ザーズ)が歌っていることも本作の話題だ。シャンソンやジャズ、ブルースなどをルーツに持つ彼女のハスキーな歌声は映画と親和性が高く、その楽曲はマーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』などでも使用されている。
「Belle」はアコースティック・ギターのアルペジオにストリングスが重なる短調の楽曲で、もともと1965年のテレビドラマ版のテーマとして作られたもの。映画の公開に先行してリリースされているサウンドトラック盤では、同じくテレビドラマで使われていた楽曲「L’oiseau」なども収録されており、彼女のファンは一聴の価値ありだ(主演のフェリックス・ボシュエが歌う「Belle」も収録されている)。(文:伊藤隆剛/ライター)
『ベル&セバスチャン』は9月19日より全国公開される。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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