80年代には『モーリス』などイギリスの美男俳優として、90年代にはハリウッドに進出して『フォー・ウェディング』や『ノッティングヒルの恋人』などロマンティック・コメディで次々ヒット作を連発したヒュー・グラント。スマートな外見に洗練されたユーモア・センスを備えた二枚目も今年55歳。近年は全盛期にくらべて仕事をセーブしているが、今月は大作『コードネームU.N.C.L.E.』と『Re:LIFE〜リライフ〜』と出演作が2本続けて日本公開になる。
・【映画を聴く】ヒュー・グラントの新境地『Re:LIFE』。監督の息子による音楽も快適!
主演作『Re:LIFE〜リライフ〜』は、『ラブソングができるまで』のマーク・ローレンス監督とのコンビ作。前作では80年代のポップスター、本作では若くしてオスカー受賞者になった後に低迷が続く脚本家。旬を過ぎた下り坂の元人気者という設定がかぶり気味なのだが、では今回はどう演じるのかと楽しみにさせてくれるのがヒュー・グラントという役者のすごいところであり、果たしてその期待を裏切らない仕事を見せている。
本作の主人公・キースはスランプ状態でくすぶり続けていたが、見かねたエージェントから勧められて地方の大学で脚本講座の講師を務めることになる。引き受けたものの、まったく乗り気ではなく、受講者選定は学生の提出書類審査のはずなのに、フェイスブックで可愛い女子学生をチェックして、あとは非モテ系男子学生数人をピックアップ。中でも美人で強気な女子とすぐにいい仲になってしまう。挫折したといっても、どん底まで落ちたわけではなく、ちょっとシニカルで、お手軽なところで見つけた女性を相手にする。ヒューお得意の役どころだ。
今までのキャラクターだと、余裕をかましながらも何やらギラついた感があったのだが、『Re:LIFE〜』ではむしろ枯れた雰囲気がある。過去の栄光だけで認識される自分の価値を客観視し、今の自分が本当に求めるものは何かを見つけていく男。その姿は、歳を重ねるに従ってなぜか若さを取り戻そうとしたり、過去の功績をひけらかしたくなってしまう大人の悪しき習性への戒めであり、そうしたものと距離を置こうとするキース像は、これまでは反面教師的にそういう役柄を演じてきたヒューならではのものだ。
肩の力が抜けた風に演じているのではなく、本当に力むことのない佇まいになった。これは50歳を過ぎて父親になるという私生活の変化も影響しているのかもしれない。今でも記録上は独身だが、2人の女性の間に交互に子どもをもうけて間もなく4児の父になる。
子どもたちと接するようになって「ずいぶん性格がまるくなった」と自認しているヒュー。かつては女性関係のゴシップで世間を賑わし、電話を盗聴したパパラッチとは法廷で毅然と戦う激しさを見せていたが、そうした波乱を乗り越えた今のヒュー・グラントには本物の大人の落ち着きがある。
『コードネーム U.N.C.L.E.』でヘンリー・カヴィルとアーミー・ハマー演じる主役コンビが奮闘する脇からサッと現れて、おいしいところを全部さらうような名演は、今の彼だからこその仕事なのだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『Re:LIFE〜リライフ〜』は11月20日より公開。
冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。
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