『オデッセイ』
28日(現地時間)発表の第88回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞など全7部門でノミネートされた『オデッセイ』。火星に独り取り残された宇宙飛行士の奇跡のサバイバルを描いたアンディ・ウィアーのSF小説「火星の人」をリドリー・スコット監督、マット・デイモン主演で映画化した。
火星の有人探査計画「アレス3」のクルーたちが調査中に砂嵐に巻き込まれる。彼らは避難中に負傷し、通信の途絶えた1人が死亡したとみなし、彼を残して脱出する。この時点では顔もはっきりわからないこの男が主人公のマーク・ワトニーだ。重傷を負って気絶していたワトニーが嵐の去った火星で目を覚ますと、そこにはもう誰もいない。激痛に悶絶しながら傷を処置し、状況を把握し受け容れた瞬間から、彼は次の探査機が来るまでの期間を生き延びるために行動を起こす。
空気も水もなく、通信手段もない。あるのは備蓄の食料31日分。1400日。不可能だらけの過酷な状況下で、植物学者でもある彼は知識をフル稼働させて水と食糧を作り、NASAとの交信回復を目指す。一進一退を繰り返す過程を映像日記に記録し、ぼっち生活を送るワトニーは驚くほど淡々としているが、そうでなければ、そもそも宇宙飛行士になれない。その精神力は超人的なのだが、悲壮感を振り払うようにジョークを飛ばして頑張る姿は身につまされるというか、選ばれしエリートではない凡人でも強いシンパシーを感じてしまう。ここはマット・デイモンという俳優の魅力、等身大感と愛嬌が発揮され、彼の独り舞台に引き込まれる。
今年のアカデミー賞主演男優賞はレオナルド・ディカプリオ(『レヴェナント:蘇りし者』)の受賞間違いなしと言われているが、唯一対抗馬になり得ると言われているのがデイモンだ。過酷な環境にたった1人取り残された男のサバイバル劇という共通点も面白い偶然だ。(後編へ続く…)
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