(…前編より続く)
△【7位予想】『スティーブ・ジョブズ』
アカデミー作品賞受賞の映画『スラムドッグ$ミリオネア』のダニー・ボイル監督がメガホンをとった伝記映画。アップル社の共同設立者スティーブ・ジョブズの人生を、代表的な3つの新作発表会の舞台裏で起きた出来事を中心に描いた物語。
先行公開を経て、昨年10月より全米公開を果たした本作。約2500館での上映で興収は約730万ドルという数字。制作費が約3000万ドルとであることを考えると、やや厳しいスタートを切ったと言わざるを得ない。
劇場公開数は約50館。日本にもアップル社製品のファンは多く、スティーブ・ジョブズという人物に対する注目度も高い。老若男女が興味をひく作品ではないかもしれないが、一定数の集客は見込めそう。スクリーンアベレージは高そうで、ランキングに入ってくる可能性は高い。
・【週末シネマリサーチ】前編/大本命! 三代目J Soul Brothers旋風が映画界に巻き起こるか!?
△【9位予想】『キャロル』
ケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが、女性同士の美しい恋心を描いた人間物語。本作でルーニーはカンヌ国際映画祭女優賞を受賞している。
1950年代を舞台にした大人の物語は、第73回ゴールデングローブ賞5部門、第88回アカデミー賞6部門にノミネートされた。アメリカでは4館での先行公開だったが観客が殺到。週末興収ランキングで23位に入るなど話題になった。
劇場公開数は約50館と『スティーブ・ジョブズ』とほぼ同規模。1月22日にはジャパンプレミアが行われ、主演ケイト・ブランシェットが来日。ケイトの大ファンだという女優・寺島しのぶとのツーショットが大きく報道された。しっとりとした人間物語と女優たちの演技は話題を呼びそうだ。
【注目シネマ】
*『ライチ☆光クラブ』
東京グランギニョルの舞台を古屋兎丸が漫画化した「ライチ☆光クラブ」を、映画『先生を流産させる会』の内藤瑛亮監督で実写映画化。野村周平、古川雄輝、間宮祥太朗、中条あやみといった若手俳優たちが「成長することへの憎悪」のもと、自分たちの狭い世界観の中で、鬱屈とした欲求を暴力で昇華していく姿は圧倒的だ。
劇場公開数は約15館と小規模公開で、しかもR15+指定がついた作品と動員ランキングという点では大きな期待はできないが、原作コミックの世界観や俳優たちのファンは多い。暴力シーンや性描写シーンはあるものの、決してカルト映画にはなっていない。多くのことを考えさせられる作品だ。
*『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』
テレビ東京系で放送している旅バラエティ番組『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』をまさかの実写映画化。太川陽介&蛭子能収コンビとマドンナ・三船美佳の旅で巻き起こるハプニングを描く。
劇場公開数は約30館。本作のロケ地は台湾だったこともあり、先日起こった台湾南部地震の被災地へ向け、売り上げの一部を義援金として寄付することが発表された。まさか!?の映画化、まさか!?の大ヒットを期待したい。(文:磯部正和/映画ライター)
磯部正和(いそべ・まさかず)
雑誌の編集、スポーツ紙を経て映画ライターに。基本的に洋画が好きだが、仕事の関係で、近年は邦画を中心に鑑賞。本当は音楽が一番好き。不世出のギタリスト、ランディ・ローズとの出会いがこの仕事に就いたきっかけ。
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