(…前編「オジサンだらけの内部対立が醍醐味」より続く)
・【元ネタ比較】前編/豪華キャストでお得感? 映画ならではのカタルシス得られる『ロクヨン』:オジサンだらけの内部対立が醍醐味
【元ネタ比較】『64-ロクヨン-』中編
ドラマ版よりもあっさりしすぎで物足りない
県警内部の警務部と刑事部、マスコミの記者クラブの三つ巴の関係が絡み合うなか、時効が1年後に迫った少女誘拐事件、通称“ロクヨン”を追う横山秀夫のミステリー小説「64(ロクヨン)」が映画化された。警察だけでなくマスコミも大きな存在となるのは、主人公・三上(佐藤浩市)が警務部の広報官を務めていることと、事件の収束に向かうための情報開示においてマスコミとの連携が重要であるからだ。特に7日間しかなかった昭和64年に発生した“ロクヨン”は、昭和天皇崩御に関する話題でニュースは持ち切りで、マスコミは事件解明のための十分な機能を果たさなかった。
事件解明だけでなく、そのあたりの内部の駆け引きが捜査に関わってくるのが本作の面白さとなっている。
メガホンを取ったのは、『ヘブンズ ストーリー』などの瀬々敬久監督。実直な作風で好感持てるが、ケレン味は控えめな監督だと思う。そのためか、2015年4月にNHKで放送されたドラマ版よりもやや薄味で、少し伝わりづらいような気もした。
例えば会見時に、県警側が事件について詳細は把握しておらず権限もほとんどない若手を差し向けたことについて、マスコミの怒りを買う場面。マスコミが県警側の若手に事件について執拗に質問、そのため何度も上層部に聞きに行くことになる若手が夜通しの往復でヘロヘロになるという、見ていて失笑しか出てこない低レベルないじめをマスコミは行うが、映画版ではくどく往復を見せずにサラッと描いており、泥臭い力の攻防であることが今ひとつわかりにくい。本筋においてはそれほど重要なシーンではないが、内部のパワーバランスを理解するためには、小さな積み重ねの演出がないと物足りないように思う。
また、主人公・三上のプライベート上での出来事も物語の大きな要素としてあり、それは三上の娘が精神的に追い詰められていて親子関係もうまくいっておらず、目下、行方不明となっていることだ。三上個人宅に無言電話があり、「行方不明の娘からでは!?」と希望を抱くエピソードがあるが、この無言電話に関しても、三上と“ロクヨン”捜査に関わっていた婦警・村串とのやりとりが原作でもドラマ版でもあるが、映画版にはなく、このやりとりはドラマとしてもミステリーとしても重要だと思うので割愛されていたことを残念に感じてしまった。ドラマはもちろん、ミステリーとしても伏線や小さなエピソードの積み重ねがあってこそ、真実にたどり着いたときに納得できて感慨深いというものだ。(後編「原作やドラマ版とも違うオリジナルラストが!」に続く…)
『64-ロクヨン-前編』は公開中、『64–ロクヨン-後編』6月11日より公開される。
・【元ネタ比較】後編/豪華キャストでお得感? 映画ならではのカタルシス得られる『ロクヨン』:原作やドラマ版とも違うオリジナルラストが!
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