原作と映像化された作品を、重箱の隅をつつくように細か〜く比較する【元ネタ比較】。今回は『セトウツミ』を取り上げます。
【元ネタ比較】『セトウツミ』前編
独特の間とテンポがクセになる会話劇
月刊少年コミック誌「別冊少年チャンピオン」で2013年5月号から連載スタートした、此元和津也原作による『セトウツミ』が映画化された。映画化と聞いたときは少々驚いた。というのも、この『セトウツミ』は男子高校生2人がただただしゃべるというだけの、起承転結も山場もない1話完結形式のコミックだからだ。
セトウツミは漢字で書くと“瀬戸内海”となり、瀬戸と内海という男子高校生2人が関西弁で交わす他愛もないまったりとしたおしゃべりを描いている。大阪の堺市が舞台となっていて、大阪といっても猥雑な都会の街ではない、“瀬戸内海”からイメージされるようなのんびりとした生活感のある平凡な町だ。川辺に面した階段に腰を下ろし、熱い青春を送るわけでもない帰宅部の2人が放課後の暇つぶしをうだうだと繰り広げる。
だが、なんていうことなさそうな内容なのにクセになるほど面白いのだ。よくある脱力系や日常系ともまたひと味違って、独特の間とテンポで進んでいく、どこに着地点があるかわからない2人の会話劇が絶妙。目が離せなくなり、おのずと笑いがこみ上げてくる。でも、関西弁のかけあいと言っても、ボケとツッコミが漫才のようにポンポンと進んでいくわけではない。のらりくらりとしているようでいて、言葉を省略しても通じる2人の呼吸は息ぴったり。しれっとしたツッコミを織り交ぜながら交わされる「ああ言えばこう言う応酬」にいつしか引き込まれていく。気だるいけど刺激的ななんとも言えない心地いい空気感はいつまでも見ていたくなるのだ。・(…中編「大阪弁ネイティブの菅田は問題ナシ!」より続く)
『セトウツミ』は7月2日より公開。
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