【元ネタ比較】『セトウツミ』後編
菅田は及第点も、残念なのは池松のゆるふわヘア!
・(…中編「大阪弁ネイティブの菅田は問題ナシ!」より続く)
此元和津也原作による、大阪を舞台に男子高校生2人の放課後のやりとりを描いた、少年漫画『セトウツミ』。主人公2人のうち瀬戸を菅田将暉、内海を池松壮亮が演じて映画化された。
おバカで憎めない瀬戸役の菅田はネイティブな関西弁も生かして及第点といったところ。対して福岡県出身の池松壮亮の関西弁は聞いていて気持ち悪くなるほどではないが、若干の違和感はある。筆者が関西出身のため微妙な違いも聞き分けられてしまうからかもしれないが、この会話劇で関西弁は重要だからしてこだわってほしい。しかも、よっぽど他の点が良いなら目をつぶるけれど、筆者は池松の内海役に関西弁以上の違和感を覚えてしまった。
内海はクールなメガネのインテリで、川辺にいるのも塾に行くまでの時間つぶしだ。そんな内海だが、決してナイーブで女々しいキャラクターではない。硬派でスッキリとした格好良さがあり、そのためにちょっとヤンキーくさい瀬戸と並んでも対等に見える。
その内海を池松壮亮が扮すると、なんだかいじめられっ子感が漂う。髪質は変えられるものじゃないけど、原作の内海が直毛サラサラヘアなのに、池松がゆるふわヘアだから余計に柔らかイメージを与えるのかもしれない。あと、ヒゲの剃りあと。青々として高校生に見えない。全体的にだんだんとバカリズムに見えてきてしまったじゃないか。髪をもう少しどうにかするなどして、見た目だけでもスッキリ感が欲しかった。
そもそも、この作品には2人の“男らしさ”が大切だと思う。男同士ならではの距離感とくだらなさ、おかしさ。ここに何でもないようでいてかけがえのない青春を感じさせるからだ。
欲を言えば菅田も原作の瀬戸よりかわいくて男らしさが足りない。単行本の最新刊6巻の表紙を再現した2ショットなど、原作をトレースしたビジュアルが多々あるので、2人の男らしさを見比べてもらえるとわかるだろう。
また、会話劇を彩る音楽はドラマチックなタンゴ調のコミカルなもの。爆笑を巻き起こすわけでもないユルいムードが良いのに、煽り気味に盛り上げようとするのは好みに合わなかった。
読みながら脳内で作り出していた2人の間やトーンはイメージ通りだし、微かに聞こえる川の音やそよぐ風をとらえることができ、瀬戸と内海をとりまく空気を感じさせてくれたことは嬉しい。そこには実写の良さがあったと思う。(文:入江奈々/ライター)
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『セトウツミ』は7月2日より公開。
入江奈々(いりえ・なな)
1968年5月12日生まれ。兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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