日本でもネットの炎上がしばしば問題となるが、中国の“炎上事情”は日本よりも深刻と言えるだろう。政治問題に発言しにくいという事情もあるからか、芸能人対する書き込みが時に限度を逸脱することもあり、批判に耐えかねて自殺するタレントも出ている。先月は、若手人気俳優キミ・チャオ(喬任梁)が自殺に追い込まれた。
9月16日に死亡したキミ・チャオは、享年28歳。大手ネットメディア・163娯楽網によると、自宅で自殺していることにガールフレンドが気づき警察に通報、死亡が確認された。
15年の7月、キミ・チャオはバラエティー番組(『私たち愛し合おう』)で女優のジョ・ロ(徐璐)と仮想恋人を演じたが、あまりにもリアルだったので、ファンは現実でも2人が恋人になることを望んだ。だがキミ・チャオはインタビューで、2人が恋人になる可能性はないと否定。それがファンを刺激し、「嘘つき」、「ジョ・ロを弄んでいる」などの批判が殺到した。さらにキミ・チャオは中国版ツイッターのウェイボー(微博)に、“仮想恋人の実現”をあきらてくれない熱烈ファンに向けての皮肉とも受け取られるようなコメントを投稿し、ユーザーからひどいバッシングを受けることとなった。
さらに、8月に発生した天津爆発事故について、消防士のことを心配するコメントをウェイボーに投稿すると、「言葉遣いが不適切」「中国語が下手」との批判が噴出し、再び炎上した。
このようなことが続いたことから、キミ・チャオはうつ状態となったと見られている。
一方、キミ・チャオの死については、彼の親友であるジョー・チェン(陳喬恩/女優)とチャオ・リーイン(趙麗穎/女優)がウェイボーで何もコメントしなかったことについいても批判が殺到。キミ・チャオについては、コメントをしてもしなくても炎上するという悪循環に陥っていたようだ。
また、キミ・チャオの親友で人気タレントのジン・ ボーラン(井柏然)はキミ・チャオが亡くなってから6日目に「ウェイボー、さよなら」の写真を投稿し、ウェイボーを閉鎖。これは、ネット暴力への抗議であると言われている。
台湾の女優スー・チーも、12年にウェイボーへの投稿が炎上したことから1000以上の投稿を削除した上で、一時、ウェイボーを停止せざるを得なかったことがある。また、14年には香港のタレント、チョン・カイシン(陳開心)、15年には台湾のモデル、シンディー(楊又颖)などが、ネット炎上に端を発した“言葉の暴力”で自殺している。
キミ・チャオについては、死因について「SMで死亡」といった事実と異なる死因を投稿する人もいるなど、彼は死後もなおネットによる暴力を受け続けている。死者を冒涜するような行為については多くの中国人が怒りを感じているが、今の所、解決の糸口は見つかっていない。(文:崔璐)
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