【元ネタ比較】映画『火花』後編
青春ドラマの熱さと感動が!
お笑い芸人・ピースの又吉直樹原作による芥川賞受賞の「火花」が映画化された。芽の出ない若手コンビ“スパークス”の徳永と先輩芸人・神谷が厳しいお笑い界を歩む10年の軌跡を描いている。
原作で描かれる神谷は飄々としていてつかみどころがなく、コンビ漫才師とはいえ相方も持て余すような天才肌で孤高の芸人。神谷のモデルじゃないかと言われる芸人・烏龍パークの橋本や、どことなく橋本を彷彿とさせるドラマ版の神谷役・波岡一喜も、目もとがクールで温度は低いイメージだ。
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対して桐谷はクリッとした瞳は愛嬌があって人懐こい雰囲気があり、彼が演じる神谷は原作やドラマ版のカリスマ性ある神谷像とは違って、放って置けない温かい人柄といったところ。
キャスティングで惜しいのは、徳永の相方がなんと2丁拳銃の川谷修士だということ。何がどうって菅田との年齢差! だって約20歳差だよ? COWCOWや小籔千豊と同期だよ? ドラマ版で相方を演じたお笑いコンビ・井下好井の好井まさお演じるので良くない?
いくら川谷が若く見えるとはいえ、菅田将暉と並ぶと違和感があって気になってしまった。神谷の相方役は元芸人でもある三浦誠己でハマっているのに、なんだかもったいない。川谷は漫才シーンはもちろんのこと演技も申し分なく、熱いドラマに乗せられてちゃんと感動できたけれど。クライマックスの“スパークス”の漫才シーンは原作やドラマ版と同じく涙が止まらなかった。
また、神谷の変貌ぶりは、原作やドラマ版で感じる複雑な心境よりも、純粋な哀愁が感じさせられ、彼が語る芸人への愛に満ちたセリフは原作者である又吉の思いが込められているのだろうと素直に感動した。
そのまま映画は幕を閉じ、原作やドラマ版にある赤裸々な温泉のシーンはカット。見る前は板尾監督にぴったりな、絵面的にもさぞかしインパクトのあるシーンを用意したことだろうと思っていたのでいささか拍子抜けだった。
しかし、それよりも万人に馴染みやすい作品にしようと、板尾は職人監督に徹したのだろう。エンディングはビートたけし作詞・作曲による名曲「浅草キッド」の菅田と桐谷によるカバー曲。板尾監督がこの曲ありきで作品を作り上げていったというのも納得の作品に合った主題歌だ。売れない芸人をしんみりと歌ったこの歌によって、さらに映画らしい締めくくりを味わいながら感動を噛みしめることができる。(文:入江奈々/ライター)
『火花』11月23日より全国公開される。
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