ハリウッドで吹き荒れるセクハラ騒動が映画の製作や公開に影響を及ぼしている。最も大きな影響を受けているのはワインスタイン・カンパニーだ。
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騒動の発端でもあるハーヴェイ・ワインスタインが弟と共同で設立したワインスタイン・カンパニーは、アカデミー賞を狙いベネディクト・カンバーバッチが発明家トーマス・エジソンを演じた『The Current War』(原題)を全米で11月24日に公開予定だったが、18年に延期。トロント国際映画でワールドプレミア上映された後の公開延期という事態となった。
日本でもヒットしたフランス映画『最強のふたり』のリメイク『The Upside』(原題)も年末から18年へ公開延期となった。
さらに、クエンティン・タランティーノ作品はこれまでワインスタイン・カンパニーが製作・配給してきたが、取り止めに。新たなプロデューサーとして『ハリー・ポッター』シリーズのデビッド・ハイマンが起用され、配給会社はソニー・ピクチャーズに代わった。
またアップルも、ワインスタイン・カンパニーが企画したエルビス・プレスリーの伝記ドラマの製作を決めていたが中止した。
自社作品の公開延期や製作中止が相次いでいることから、ワインスタイン・カンパニーは買収先を探しているという。ただし、負債額が5億ドル以上と巨額なため、なかなか見つからないようだ。
ちなみに、ハーヴェイ自身は大物プロデューサーとしてミラマックス時代から20年間以上にわたりアカデミー賞を席捲してきた。プロデュース作品は毎年のように作品賞にノミネートされ、『イングリッシュ・ペイシェント』『恋におちたシェイクスピア』『シカゴ』『英国王のスピーチ』『アーティスト』の5作品が作品賞を受賞した。だが、アカデミー賞を選考する映画芸術科学アカデミーでは彼を除名することにした。
一方、演技派俳優のケヴィンン・スペイシーにも影響が出ている。ネットフリックスの主演ドラマ『ハウス・オブ・カード』がシーズン6で終了(現在はシーズン5を配信中)。ドラマ終了は数ヵ月前から決まっていたというが、最終シーズンとなる6では、ロビン・ライトが中心の内容となり、スペイシーは出演しないことが発表されている。
またリドリー・スコット監督の新作映画『All The Money In The World』(原題)でも、スペイシーの登場場面がすべて差し替えられることになった。同作は12月22日の全米公開にあわせて撮影が済み完成していたものの、製作陣はスペイシーのスキャンダルにより同作の評価が下がることを懸念。スペイシーの出演シーンすべてを、クリストファー・プラマーを代役に立てて撮り直すことにした。再撮影をすぐに行うため、全米公開に変更はないという。
ピクサーCCOのジョン・ラセターもセクハラが発覚し、6ヵ月間休職することになった。ただしこちらについては、ピクサーの新作『リメンバー・ミー』の興行成績を見る限り影響はなさそうだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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