2017年の映画界を振り返る/人種差別を新たな手法で描き、女性監督も活躍
【2017年の映画界を振り返る】前編
多様性への気運高まったハリウッド
2017年のハリウッドを振り返ると、「差別への反発」と「ハラスメント」という2つのキーワードが浮かび上がる。
・前代未聞!アカデミー賞授賞式でハプニング、作品賞を『ラ・ラ・ランド』と間違えて発表!
今年2月、極端な白人男性優位社会だったハリウッドが最高の栄誉であるアカデミー賞作品賞を贈ったのは『ムーンライト』だった。貧困地区で親の愛情に恵まれずに育ったアフリカ系で同性愛者の青年を描く同作が、鉄板の大本命作『ラ・ラ・ランド』を抑えての受賞は、プレゼンターによる作品名読み間違えのドラマと相まって映画史に残る大どんでん返しとなった。
前哨戦で圧倒的な強さを見せていた『ラ・ラ・ランド』は、ハリウッドやフランス映画の名作への目配せも効いた白人の美男美女が主役の恋愛ミュージカル、最多ノミネート作でもあった。一方、『ムーンライト』は製作費わずか150万ドルのインディーズ映画。最初にステージへ上がった前者チームが、喜びと感謝のスピーチをしている最中に間違いが発覚したが、天国から地獄に突き落とされたような状況にもかかわらず同作プロデューサーのジョーダン・ホロウィッツは「『ムーンライト』の友人たちにこれを手渡せることを本当に誇りに思う」と語り、登壇した『ムーンライト』のバリー・ジェンキンス監督にオスカー像を渡してハグした。
この逆転劇には、前年の俳優部門候補発表時に起きた「オスカー真っ白」騒動(候補者全員が白人)や授賞式の前月から発足したトランプ政権への、ハリウッドからの強い反発も影響したと思われる。授賞式は司会のジミー・キンメルのオープニングトークをはじめ、徹底して大統領と政権に対する批判的な演出だったが、最後に2作のフィルムメーカーたちが見せた友情と尊敬は、排他的な姿勢を打ち出す新政権に対するハリウッドの心情を印象づけるものとなった。
日本公開は来年だが、主演のシアーシャ・ローナンのオスカー候補入りが確実視される『Lady Bird(原題)』は女優のグレタ・ガーウィグ(『20センチュリー・ウーマン』)の初監督作だ。前年からの流れを受け、ハリウッドが多様性を強く意識した1年だった(後編へ続く…)。
・後編「メリル・ストリープも弾劾! 加害者・被害者の対立軸に、傍観者への批判も出たセクハラ騒動」に続く…
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