近くにいるからこそ愛憎も深く! 兄弟ならではの微妙な感情に親は気づいてあげて

#映画レビュー

『犬猿』
(C)2018犬猿製作委員会
『犬猿』
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『犬猿』
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『犬猿』
(C)2018犬猿製作委員会

前編「兄弟だから似ている、兄弟だから仲が良い−−そんなものは幻想〜」より続く

【ついついママ目線】『犬猿』後編
近い存在だからこその愛憎を認識して欲しい

個性的なそれぞれがハマリ役で2人兄弟と2人姉妹を見せる『犬猿』。兄の存在に怯える和成を窪田正孝が演じ、実直でお人好しに見えて実はまるっきりの善人ではない本音が見え隠れしていき、丸出しになってしまう姿には苦笑を禁じ得ない。なんだかんだ言っても兄と同じ血が流れていて腹にはドス黒いものを抱えていそうだ。

映画では存在が薄い母親がとんでもなかった!

新井浩文演じる兄の卓司は絵に描いたような粗暴なチンピラだが、憎みきれないところがあるのはこちらも弟と同じ血が流れているということだろうか。和成にほのかな恋心を抱く江上敬子扮する由利亜は勉強や仕事はできるが、こと和成に関することとなるとどうも頭がいいとは言えない言動を起こす。

頭が空っぽで見た目は抜群な妹の真子は姉をバカにしてるものの内心では勉強も仕事もできる姉にコンプレックスを抱き、人から姉を悪く言われると黙ってはいられないぐらいの愛情は持っている。真子は筧美和子が演じており、正直言って期待していなかったが、特筆すべきなほど女を武器にする女の敵のような女でいて悲哀も合わせ持っている絶妙なバランスを体現している。

この兄弟姉妹を見ていると、そうは言っても兄弟なんだから最後には兄弟愛が勝つよね、と安易にまとめられないところに兄弟の愛憎の深さを痛感した。

兄弟なんだから似ていて当たり前、仲良くして当然などという固定観念は絶対に押し付けるべきじゃないだろう。家庭内で自分と同じ立場に立っている兄弟は、周りから言われようが言われまいが、本人自身が自分と逐一比較してしまうもの。近くにいてかけ離れた存在じゃないからこその憎しみも生まれて当然だ。その繊細なところを、親は今一度認識して接してあげて欲しいと思う。(文:入江奈々/ライター)

『犬猿』は2月10日より公開される。

入江奈々(いりえ・なな)
兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。