(…中編「子どもが発する『男同士で結婚できるの?』の素朴な疑問への誠実な答えとは?」より続く)
【元ネタ比較】『弟の夫』後編
優しい気持ちになって勇気が湧いてくる
田亀源五郎原作のヒットコミック「弟の夫」がドラマ化された。キーパーソンである“弟の夫”は元力士の把瑠都が演じている。
人柄がにじみ出てるような温かく優しい空気がマイクそのもので、とても癒される。冒頭で登場しただけで、最愛の人の喪失感を抱えて日本にやってきたのだなぁと思えて、それだけで涙が込み上げてきた。把瑠都をキャスティングした時点で、もうこの実写化ドラマは成功したんだと言いたくなるぐらい。
主人公の弥一には佐藤隆太が扮し、彼もイメージぴったりだし、こまやかな感情の表現がうまい。原作のコミックではモノローグで語られる弥一の心の内の葛藤がドラマ版では出てこないが、佐藤が微妙な表情の変化でカバーしている。
娘の夏菜を演じる根本真陽は天真爛漫さを嫌味なく体現し、夏菜の母で弥一の別れた元妻は中村ゆりが演じている。そう、言っていなかったが、弥一は弥一で離婚しており、離婚した妻とときおり共に過ごす一風変わった夫婦。彼らも“普通”の家族ではないのだ。
LGBTに限らず、自分とは異なる考えや感覚を持った他者を理解して尊重し合うのは、当たり前でいて意外と容易ではないこと。柔らかな光が美しい映像もあいまって優しい気持ちになれる本作を見ると、容易ではないことにも一歩踏み出す勇気が湧いてくる。(文:入江奈々/ライター)
『弟の夫』はNHK BSプレミアムにて毎週日曜夜10時より放送中(再放送はBSプレミアムにて翌週日曜午後4時30分から)。
入江奈々(いりえ・なな)
兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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