2月21日に惜しまれながらもこの世を去った大杉漣さんの、最初のプロデュース作にして最後の主演作となる『教誨師(きょうかいし)』が10月6日より有楽町スバル座ほかにて全国順次公開されることがわかった。
教誨師とは、受刑者に対して道徳心の育成、心の救済につとめ、彼らが改心できるよう導く人のこと。大杉さんが演じるのは、本作の主人公で、死刑囚専門の教誨師である牧師の佐伯役。独房で孤独に過ごす死刑囚にとって、教誨師はよき理解者であり、話し相手。真剣に思いを吐露する者もいれば、くだらない話に終始したり、罪を他人のせいにする者もいる。みんな我々と変わらない人間でありながら、どこかで道を誤ったり、ちょっとしたボタンの掛け違いによって、取り返しのつかない過ちを犯した人々だ。
一方、佐伯は彼らに寄り添いながらも、自分の言葉が本当に届いているのか、死刑囚たちが心安らかに死ねるよう導くのは正しいことなのかと苦悩する。そんな葛藤を通して、佐伯もまた、初めて忘れたい過去と対峙し、自らの人生と向き合うことになる。
佐向監督は、大杉さんとの思い出について「3年前、小さな喫茶店で、この企画を一番最初に話したのが大杉さんでした。『いいね、やろうよ』。その一言をきっかけにこの作品が生まれました。私にとって主演俳優以上の存在だった大杉さんの訃報を前に、全く心の整理がついていません。ただこれだけはいえるのは、人生は限りがある。だからこそ、かけがえのない時間を、かけがえのない仲間とともに、どんなお仕事でも遊びでも手を抜かず、一瞬一瞬を精いっぱい全力でやられていた方だったのではないか。あの優しさ、包容力、エネルギーはそんなところからきていたのではないか。今はそんな気がしています。この作品で大杉漣という役者のすごみを改めて目の当たりにしました。おそらくみなさんも同じ思いを抱くのではないかと思います」とのコメントを寄せている。
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