【映画を聴く】『万引き家族』前編
細野晴臣も是枝作品のファン
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞してからおよそ3週間。是枝裕和監督の『万引き家族』が、いよいよ日本で公開される。これまでさまざまな形の“家族”を描いてきた是枝監督による、家族を超えた家族の物語。「リアリズムの先に寓話が立ち上がってくるような映像と音にしたい」という監督の意向で、撮影&照明および音楽には是枝作品初参加の面々が集結している。音楽を担当するのは周知の通り、細野晴臣だ。
是枝作品の音楽といえば、『誰も知らない』『歩いても 歩いても』、テレビドラマ『ゴーイング マイ ホーム』のゴンチチ、『奇跡』のくるり、『海よりもまだ深く』のハナレグミあたりがまず思い出される。ぱっと見、豪華かつバラエティ豊かな人選に思えるが、音楽そのものはアコースティック基調で静謐な、隙間を活かしたトーンという点で共通している。あくまでも主役は映像なのだ。グレン・グールドの既発のピアノ曲を中心に使った『そして父になる』でもその方針は変わらない(ただし『海街 diary』の菅野よう子と『三度目の殺人』のルドヴィコ・エイナウディは比較的エモーショナルな楽曲が多い)。
いっぽうの細野晴臣も是枝作品のファンで、件の『空気人形』は昔住んでいた街がロケで多用されていたこともあって愛着の強い作品だとか。先日、自身のレギュラーFM番組に是枝監督がゲスト出演した際、「実はあの映画の音楽、細野さんに頼みたかったんですよ」と告白され、「それはやりたかった!」と本気で残念がっていたから、本作はお互いにとってまさに待望の共同作業になったと考えていいだろう(後編へ続く…)。
・後編「ほとんど枯山水の域! 細野晴臣が『万引き家族』に提供したのは〜」
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