【映画を聴く】『静寂を求めて−癒やしのサイレンス−』前編
これぞ静寂といった映像が次々と
現代音楽の作曲家であり思想家でもあるジョン・ケージの書いた「4分33秒」という楽曲をご存知だろうか。いわゆる「無音」の音楽で、演奏者は舞台に上がると、ピアノの前に座って鍵盤蓋を開け、ポケットからストップウォッチを取り出す。演奏者は4分33秒が過ぎるのをじっと待ち、聴衆はその静寂に耳を澄ます、というのがパフォーマンスの基本形式である。ピアニスト以外が演奏する場合もあり、このドキュメンタリー『静寂を求めて−癒やしのサイレンス−』の中では、フルオーケストラ編成による「4分33秒」が披露されている。
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ただし「4分33秒」は、正確な意味で「無音」とイコールではない。というのも、4分33秒の間続く静寂には、演奏者と聴衆の息遣いや咳払い、衣擦れのほか、あらゆる環境音が含まれているから。ケージが「4分33秒」を作曲した理由もそこにあると言われている。1952年の発表当時には単なる悪ふざけと思われたこの楽曲は、年月を経るにつれて深い解釈が与えられるようになり、表現の世界で存在感を増している。本ドキュメンタリーを通じてパトリック・シェン監督が伝えたかったことも、多くはこの「4分33秒」のコンセプトに含まれていると考えていいだろう。
穏やかに風が吹き抜けるトウモロコシ畑の風景から本作は始まる。その後、海を臨む山上の野原、小川の水面、夜明け前のガソリンスタンド、廃墟となったレンガ造りの工場、凧揚げをする人々が見える小高い丘など、これぞ静寂といった映像が次々と映し出され、巨大オフィスでの黙祷が終了し、沈黙が破られるシーンまでその静けさは続く。
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