【映画を聴く】『静寂を求めて−癒やしのサイレンス−』後編
話題の「爆音上映会」での上映求む
(…前編「騒音は、大気汚染に次ぐ重大な公害! 騒音に満ちた現代社会を生き抜く方法を探求する」より続く)
本作『静寂を求めて−癒やしのサイレンス−』に登場する中で、見る者にひと際強い印象を与えるであろう人物が“サイレント・ウォーカー”のグレッグ・ヒンディだ。22歳の時に沈黙の誓いを立て、23歳の誕生日までの1年間無言を貫いてアメリカ横断をやり遂げた彼は、自らの試みについて「僕が逃れたい雑音の根源は、電子機器とエンターテインメントだ」と筆談で伝える。
確かにスマホの小さな内蔵スピーカーで鳴らされるMP3の圧縮音源は、いわば解像度の荒い画像ファイルと同じ。音量を上げるほどにそのアラが目立つようになる。作中にも出てくる渋谷スクランブル交差点付近のような繁華街では、各店舗がフルボリュームでひっきりなしに音楽をかけ、通行人は全方向から無差別に“騒音の攻撃”を食らうことになる。そもそも現代のEDMやラウドロックといった種類の音楽は、ピークメーターが振り切れるぎりぎりまで音量を詰め込まれるものが多いので、“即効性”はあるが長時間のリスニングには向かない。外界の雑音を遮断するノイズキャンセリング機能付ヘッドホンをオーディオメーカー各社がこぞって発売する現状を鑑みても、ヒンディ青年のストレスは現代の都市生活者すべてが潜在的に抱えている問題であることは間違いない。
とはいえエンターテインメントのすべてが雑音というわけではないし、音楽において、もっと言えば映画においても、「静寂を聴く」ことは作品理解を深めるために欠かせない受け手のマナーである。現にドイツの老舗ジャズレーベル、ECMはスローガンとして「The Most Beautiful Sound Next To Silence(沈黙の次に美しい音楽)」という言葉を掲げていたりもする。
『静寂を求めて−癒やしのサイレンス−』は9月22日より公開順次公開される。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
出版社、広告制作会社を経て、2013年に独立。音楽、映画、オーディオ、デジタルガジェットの話題を中心に、専門誌やオンラインメディアに多数寄稿。取材と構成を担当した澤野由明『澤野工房物語〜下駄屋が始めたジャズ・レーベル、大阪・新世界から世界へ』(DU BOOKS刊)が刊行されたばかり。
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