真田広之は「彼(渡辺謙)の存在に必要な威厳を与えた」
2月27日からディズニー+で配信されるシリーズ『SHOGUN 将軍』を製作、主演を務める真田広之について、彼のハリウッド進出のきっかけとなった映画『ラスト サムライ』(03年)のエドワード・ズウィック監督が回顧録で綴った。
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デンゼル・ワシントンがアカデミー賞助演男優賞を受賞した『グローリー』(89年)やブラッド・ピット主演の『レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い』(92年)、レオナルド・ディカプリオ主演の『ブラッド・ダイヤモンド』(06年)などで知られるズウィックは回顧録「Hits, Flops, and Other Illusions: My Fortysomething Years in Hollywood」で40年以上のキャリアを振り返っている。
トム・クルーズが明治初期の日本で政府と敵対する“最後のサムライ”たちと共に戦うアメリカ軍人を演じた『ラスト サムライ』では侍たちの一族の長・勝元を演じた渡辺謙がアカデミー助演男優賞候補となった。ズウィックによると、オーディションで渡辺の「力強さやユーモア、感情の豊かさに触れて彼の起用を決めた」が、「日本の多くの制度と同様に、キャスティングにはしばしばヒエラルキーがあった」当時、日本側は勝元役には“日本のトム・クルーズ”である真田広之が起用されると考えていたという。
「私がケンを選んだと聞いたワーナー・ブラザースの日本代表は不快感を隠そうとしなかった。彼らはバーバンク(アメリカ本社)の重役たちに、これは酷い失態だと伝えた」。
ちなみに勝元役には一時、なんとラッセル・クロウがアプローチしていたそうだ。
だが、監督の窮地を救ったのは「他ならぬ真田広之その人だった。勝元の部下である氏尾役を引き受け、彼はケンと映画を支持することを強く表明した」とズウィックは明かす。
「リハーサルが始まった当初、ケンはやや緊張しているように見えたが、真田は常に敬意を示し続け、彼の存在に必要な威厳を与えた。日に日に自信をつけていくにつれて、ケンの演技も成長していった。撮影の準備が整う頃には、彼は役柄としての大きさだけでなく、世界最大の映画スターと一対一で戦う主役として、役になりきっていた」。そして「真田の幅広いマーシャル・アーツの経験は、格闘シーンの演出に大いに役だった」という。
映画は日本でも2週間のロケ撮影を行ったが、撮影最終日の夜について、ズウィックは以下のように振り返っている。
「最終日の夜、真田はケン、マーシャル(・ハースコヴィッツ。共同脚本)、ヨーコ(日本側のキャスティングに協力した奈良橋陽子)、そして私を行きつけのカラオケ・バーに連れて行ってくれた。 私は華やかでおしゃれな店を予想して入ったが、そこは正反対だった。
船の客室ほどの広さで、バーには5席しかなく、真田は私たちのためだけにその場所を予約していた。私たちがどれだけ騒ぐかわかっていたのかもしれない。真田が店に入ってきたとき、私はバーテンダーが気絶するかと思った。いくつもの才能を持つ陽子がソングライターであることもわかった。ケンは素晴らしい声の持ち主で、アメリカン・ポップスのスタンダードを好んで歌っていた。(彼はその後、『王様と私』でトニー賞にノミネートされることになる)。酒を飲まなかったマーシャルが、長い付き合いの中で初めてマイクを握りしめ、深く低い声で『ダニー・ボーイ』高らかに歌い上げたのは、私の大好きな思い出のひとつだ」。
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