ワインスタインへの告発から始まった#MeToo運動
一昨年10月、長年はたらいてきた性暴力やセクハラ行為を告発された映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが、原告側に総額4400万ドル(約48億円)を支払うことで暫定的な合意に向けて和解交渉が進んでいることが明らかになった。
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ワインスタインは女性2人に対する性暴力容疑でニューヨーク州で刑事訴追され、50人以上の女性からセクハラ行為で訴えられている。4400万ドルの内訳は和解金3000万ドルと法廷費用1400万ドル。
ここで、一昨年にワインスタインを告発する記事が世に出た直後、SNSで性的嫌がらせ被害を告発する際のハッシュタグとして広まったことから拡散した「#MeToo」運動を今一度振り返ってみよう。
一方で、この行為に対して異を唱えたのは、他ならぬワインスタインのセクハラを最初に実名で告発した女優の1人であるローズ・マッゴーワンだ。マッゴーワンは黒を着るだけでは「無言の抗議」にしかならない、と批判した。彼女とイタリア出身の女優・監督のアーシア・アルジェントは告発者でありながら、ハリウッドで起きた大きなムーブメントとは足並みがそろわず、2月に開催された第90回アカデミー賞授賞式にも彼女たちは呼ばれなかった。授賞式ではワインスタインを告発したサルマ・ハエック、アシュレイ・ジャッド、アナベラ・シオラが登場し、「タイムズ・アップ」運動や多様性について取り上げた映像を上映した。
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「タイムズ・アップ」運動は、企業のセクハラ黙認を処罰する法律の提唱のほか、スタジオやタレントエージェンシーに置ける男女格差の是正も提言していて、これを受けてマーク・ウォルバーグと彼のエージェンシーは200万ドル(約21億円)以上を寄付。『ゲティ家の身代金』の再撮影でウォルバーグが受け取ったギャラが10日間で150万ドル(約16億円)だったのに対して、同作に出演した同じエージェンシー所属のミシェル・ウィリアムズのギャラが10日間で800ドル(8万7000円)だったことが判明したからだ。ちなみに同作が再撮影となったのは、主演のケヴィン・スペイシーが「#MeToo」で過去に10代の少年にセクハラ行為をしたことが判明して降板、クリストファー・プラマーを代役に撮り直す羽目になったからだった。
1月に開催された第60回グラミー賞、2月の第71回英国アカデミー賞などでも出席者たちが黒を着たり、「Time’s Up」と記したバッジや白いバラをつけるなど、運動は盛り上がりを見せたが、「タイムズ・アップ」基金への寄付は4月を境に減少していっているのも事実だ。
12月になって、1976年、16歳のときにアレンと関係を持ち、その後8年間関係が続いたと告白した元女優が出現。「ウディを攻撃するのではなく、私は自分のラブストーリーを語りたい」「後悔していない」と言いつつ、途中からアレンのパートナーになったミア・ファローも一緒に3人で関係を持ったことまで暴露した。
前出のアーシア・アルジェントは5月のカンヌ国際映画祭にプレゼンターとして登壇した際、開口一番「私は1997年に、ここカンヌでハーヴェイ・ワインスタインにレイプされました。私は21歳でした」と切り出し、「彼を称え、彼の罪を隠蔽した映画界から見捨てられ、不名誉の中で生きていくのです」とスピーチした。その彼女自身も8月に、俳優のジミー・ベネットから彼が未成年だった時に性的関係を持ったことを暴露された。アルジェントは告発内容を否定したが、ベネットに口止め料を払っていたことが判明。支払ったのは、6月に自殺した恋人のアンソニー・ボーデインの意思だったと主張したが、この一件でそれまで共闘してきたローズ・マッゴーワンがアルジェントを非難する声明を発表し、連帯に亀裂が入った。
数々の余波を残したワインスタイン騒動はいま、大きな局面を迎えている。
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