2月興行を賑わせたのは『パラサイト 半地下の家族』だ。1月10日から全国131館で公開が始まり、週を追うごとに上映館数が増えていたが、2月10日(日本時間)のアカデミー賞受賞を受けて14日には上映館数が276館に拡大。メディアの露出が爆発的に増えたことから、映画を年間に1〜2本しか見ない層や韓国映画を見たことのない層にまで話題性が浸透し、客層が広がった。15〜16日の週末は興収3.7億円をあげ前週約3倍の急増。週末動員ランキングで1位を獲得した。
・『カイジ』が1月ランキング1位! 格差描く『パラサイト』が続く
24日には緊急来日したポン・ジュノ監督とソン・ガンホが東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで舞台挨拶を行い、再びメディアの露出が増えた。24日時点の興収は33.6億円で、日本で公開された韓国映画で最大のヒット作『私の頭の中の消しゴム』(30億円)を上回り新記録を樹立した。
『パラサイト』はアカデミー賞授賞式の前日、2月9日までに興収約16億円をあげ、既にスマッシュヒットとなっていた。SNSで評判が拡散し、ヒットの下地がある中でのアカデミー賞受賞。しかも「受賞後にすぐ見られる」のも強みで、人気に拍車をかけた。
2月公開作の1位は『ヲタクに恋は難しい』。主演の高畑充希と山崎賢人が製作元フジテレビのバラエティ番組を中心にPR活動を行った。
2位は『犬鳴村』。製作委員会には全日本プロレスが名を連ね、宣伝に貢献。公開の2日前にホテルで行われた直前会見では、会場内にプロレスリングが設置され、全日本プロレスのレスラー数名が試合を披露。場外乱闘が始まると、そこに主演の三吉彩花が乱入し、華麗な蹴りをレスラーにお見舞い。メディア露出につなげた。近年の邦画ホラー映画のヒット作といえば『貞子』シリーズで、12年『貞子3D』(13.5億円)、16年『貞子vs伽椰子』(10億円)が10億円超え。『貞子』シリーズ以外では13年『クロユリ団地』(10.2億円)以来、10億円超えがないが、7年ぶりに『犬鳴村』が10億円超えとなりそうな勢いだ。
3位は『1917 命をかけた伝令』アカデミー賞では撮影賞、録音賞、視覚効果賞の3部門を受賞。授賞式から4日後の公開で、話題性を維持した中での公開で動員に弾みをつけた。(文:相良智弘/フリーライター)
[2月公開作ランキング]
1位『ヲタクに恋は難しい』10.1億円
2位『犬鳴村』8.7億円
3位『1917 命をかけた伝令』5.8億円
(2月24時点。ムビコレ調べ)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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