「流浪の月」人気BL作家の非BL作品が本屋大賞受賞! 熱量高い作品に定評

#本屋大賞

『流浪の月』凪良ゆう(東京創元社)に決定!/公式サイトより
『流浪の月』凪良ゆう(東京創元社)に決定!/公式サイトより

コロナウィルスによる自粛関連がさまざまな業界に影響を及ぼしているが、BL業界ももちろん例外ではない。4月5日に予定されていた、通称“お庭”や“J庭”と呼ばれる“J. GARDEN”というイベントが中止になった。J. GARDENは“BLのコミケ”と言われる同人誌即売会で、二次創作ではないオリジナルBLの同人誌のイベントだ。

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さらに、来月に予定されていた本家のコミックマーケットが中止になったことも広く知られている。コミケは二次創作が多いが、二次もオリジナルも併せてBL作家が参加するイベントだ。

そもそもコミケは例年は8月と12月に開催されるところをオリンピック・パラリンピックの開催の影響で夏開催が5月に早めていたのだが、それが中止になったのだ。結局はオリンピック・パラリンピックも中止になるし、当然のことなのかもしれないが、そちらばかりが注目されて、なんだかモヤモヤする。

そんなどんよりした空気のなか良いニュースも飛び込んできた! 凪良ゆうの「流浪の月」が本屋大賞に輝いたのだ。本屋大賞は、“全国書店員が選んだいちばん!売りたい本”のキャッチコピーで知られ、過去には「蜜蜂と遠雷」や「羊と鋼の森」などが受賞している。

小説家として14年のキャリアを持つ凪良は、主にBL作品を精力的に発表しており、2017年に非BL作品である「神様のビオトープ」を発表。「流浪の月」は、昨夏に発表した非BL小説だ。

凪良は心臓をギュギュッと雑巾絞りにされるような熱量の高い作品が多く、本作も例に漏れず。ネタバレなく読んだほうが楽しめると思うので多くは語らないが、誘拐事件の加害者だった青年と被害者だった女性の関係性と心情が丁寧に描かれている。「あ〜あれでしょ、ストックホルム症候群ってやつでしょ?」と思ったそこのアナタ! 一筋縄ではいかないこの物語をしっかりと読んで真実を見届けてほしい。

ちなみに筆者が読んだなかで凪良ゆう原作のオススメはBL作品の「おやすみなさい、また明日」だ。これもまたネタバレなく読んでほしい1冊だが、こちらは切なくも甘い雰囲気のお話。しかし、その後日談でまたもや心臓をギュギュッと絞られて涙が止まらなかった。

ストーリーテリングや心情表現が上手くても、BLジャンルでは一般的に注目されることがなかなか難しいが、こうして正当な評価を得ることは喜ばしい。これからの活躍がますます楽しみだ。(文:矢野絢子/ライター)

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